泡沫少女の泡沫ノ恋。【練紅覇】

第拾壱夜・「涙のアト」 ページ13

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コンコン、という規則正しい一定の音―扉をノックする音―が聞こえて

はっと我に返った。


「お早うございます紅覇様。朝ご飯の支度は既に出来ておりますので、身支度を―」

「わか･･･った。だけど、今入ってくるのはちょっと待ってくれない?
　あと、お湯を染み込ましたタオルを持ってきて」

「分かりました!」


嬉しそうな返事をして、タッタッタッと軽やかに僕の部屋の扉の前から去っていった純々。

僕はそっと寝台から降り、ドレッサーについている鏡で自分の顔を見た。


「うわぁ･･･ひっどぉ･･･」

我ながら酷いと思う。

目は赤くなって、頬は少し引きつっている。それに涙のアトもくっきりとついている。


「ははっ･･･こんなのAに見られたら笑われちゃうなぁ･･･」




「･･･ ･･･A･･･ ･･･」





コンコン、とまたノックの音がした。

「お湯を染み込ましたタオルを持ってまいりました。･･･入ってもよろしいでしょうか?」

―純々の声が聞こえる。

「扉･･･開いてるから、隙間からタオルだけ出して」

「分かりました･･･」


純々は少し残念そうな声をした。けれど命令にはちゃんと従い、扉の隙間から手だけを出して

ほかほかとしたタオルを差し出した。

僕は扉に近づくと、そのタオルを受け取った。



「あったかい･･･」

「紅覇様･･･入ってはいけませんか?」

「うん･･･ごめんね･･･後で頭撫でてやるからもう少し待ってて･･･」

「はい!!!!分かりました!!!私、紅覇様になでなでされるためなら何年でも待ちますよ!!!」


―純々、随分元気になったな･･･。さっきまで不満そうにしてたのに･･･


そんなことを思いながら寝台の方へ向かい、すとんと座った。

そしてほかほかした暖かいタオルでゆっくりと両目をおおった。

こうしないと目が赤く腫れてしまう。


―皆に気づかれるのは嫌だ･･･迷惑をかけるのも嫌だ･･･


*

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