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肆拾陸 “〃 (4)” ページ4

「エリスちゃん、お願いだよ。ちょこっとで善いから、ね?」




彼此五分経った今でもずっと首領は先程とは違うドレスを手にエリス嬢に頼み込んでいた。
流石に徐々助け舟を出そうかと思った処でエリス嬢が机にバンッと手をついた。




「リンタロウ、執拗い!」


「だって絶対之も似合うと思うのだよ。ね?A君もそう思うだろう?」


『ええ、勿論』




ここで拒否すれば私の頸は今頃身体とおさらばしていたと思う。
単純に見てみたい気持ちもあるが、何より首領の威圧が凄い。


エリス嬢は、むーっと頬を膨らませて此方をジロリと睨んでいた。
済みません、エリス嬢。流石に今後の為にも私は命の方をとります。




「判ったわ」


「本当かい、エリスちゃん!」


「でもAも一緒にお着替えしなきゃ、それは着ないわ」


「大丈夫だよ、エリスちゃん。ちゃあんとA君の分も用意してあるからね……ほら!」




満面の笑みを浮かべた首領の手には黒を基調とした襞のドレスがあった(確か前に葬儀屋がゴスロリと云ってた物に似ている)。
……之は思わぬ巻き添えを食らったかも知れない。
否、食らった。確実に食らった。而も超特大級のものを。


二十歳過ぎの高身長寄りの女が之を着ろと……?
自身が着た所を想像(イメージ)して、余りの酷さに震えた。
段々と自然な笑みから引き攣った笑みに変わり、再度胃がキリキリと悲鳴をあげ始めた。


今 直 ぐ 逃 げ 出 し た い 。




『そう云えば太宰さんに呼ばれて……』


「彼なら広津さんと一緒に買い出しに行かせたよ」


『間違えました。確か紅葉さんに……』


「紅葉君は任務が少し延期すると先刻連絡を受けたからね、心配要らない」


『……っ、中也さんに!』


「中也君なら今頃疲れきって眠っていると思うのだがね?」




逃げ道が無い。
完璧と云える程、逃げ道が全く無い。
じりじりとドレスを手に、近付いて来る首領から逃げたいのは山々だが、膝上にエリス嬢を乗せている為に動けない。


そして遂に私が何も云えなくなる言葉を首領は告げた。




「之は首領命令だよ、A君。この服を着てくれるね?」


『……了解、致し……ました』




結局敗けた。
膝上のエリス嬢は嬉しそうな表情で此方を見ている。
若しや嵌められた?最初から首領とエリス嬢は共犯(グル)だったのでは?
否、それは無いか。



受け入れるしかない私は溜息をグッと堪えて首領から渡されたドレスを手に隣室へと向かった。

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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時

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