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肆拾漆 “〃 (5)” ページ5

部屋に入るとドレス以外の専用の装飾品やらが御丁寧に置いてあった。
恐らく私が部屋に入る前には用意されていたと思われる。嗚呼、矢張りあの二人は共犯だったのだと確信した。




『にしても、私は服のサイズを誰かに教えた事があったのだろうか』




恐ろしい程に服のサイズが合っていたので疑問に思った。
まあでも、店員に身長に合うサイズを聞けば直ぐに判る事か。
特に首領御用達の店ならば優秀な店員が多い筈だからな。



ブーツやリボン、その他の小物を色々着用して大きな鏡の前に立って自身の姿を見たが、矢張り年齢や容姿等相俟って全く持って似合ってなどいなかった。
本当にこの姿を二人に見せないといけないのか……


しゃがみ込んで鏡に手をつき、軽い絶望を感じていると扉を叩敲する音が聞こえた。
そして返事をする前に扉が開かれた。


そこに立っていたのは首領で、此方を見て少し目を見開いたまま固まっていた。
別に見られて減る物は無いがそんなに遅かっただろうか……取り敢えず無言は辛い。




『一応命令通り試着致しましたが……その、済みません』




首領の前なので立ち上がったものの、少し気恥しいので視線を逸らして謝罪した。
そんな私に首領は無言で歩み寄り、右手でそっと私の頬に触れて視線を合わせる様に上を向かせる。
首領の目は暖かく優しくも有り、それでいて私の目を確りと捉えていた。




「迚も素敵だ、似合っているよ」




その言葉に今度は私が目を見開いた。
之が似合っているだと?首領の目は大丈夫なのか?遂に眼科を紹介すべきなのかも知れない。




「今、非道い事考えただろう?」


『……正直に申し上げると首領の目は大丈夫なのかと疑いました』


「大丈夫、至って正常だよ」




首領は私の右手を手に取り、掌を合わせる様にしてから指を絡めてきた。
そしてもう片方の手で私の腰を引き寄せ、バランスを崩した私は必然的に首領の方へと抱き寄せられる。


顔を首に埋めてきたのだが何時もより肌が出ている分、髪や吐息がかかって擽ったく、身動ぎするものの確りと固定されていたので少しも動く事が出来ずにいた。




『あ、の……首領?』


「ふふ、どうしたんだい?」


『何故この様な体勢に……』


「何故だと思う?」




判らないからこそ質問したのだが逆に質問で返されるとは思ってもみなかった。
顔を上げた首領は何処か楽しげでいる。


数分後エリス嬢が遅い!と怒り乍ら入って来る迄、唯々私達は見つめ合っていた。

肆拾捌 “〃 (6)”→←肆拾陸 “〃 (4)”



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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時

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