漆拾 ページ20
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時透無一郎side
お面のせいで少し篭った優しい声で、彼女は続けた。
『…だからね、無一郎くん。現状は君が思っているほど悪くは無いよ。悲観するよりもまず彼自身を見ていておくれ。助け合うのが、家族というものだからね』
そっと彼女が僕の頭を撫でる。母にしてもらった時の感覚に酷く似ていて、少し胸がきゅっとなった。
無「……貴方にも、そんな家族が居るの…?」
綺麗な魚は、綺麗な水の中で育つと言う。
こんなふうに優しく心が綺麗なままで成長するには、どんな家庭で過ごせばいいのだろう。
彼女は一体、どんな暖かい家族に包まれて育ってきたのだろうか。そう思って質問した。
『…貴方、じゃなくて、Aと呼んでおくれ』
彼女は誤魔化した。
あぁ、まずい質問をしてしまった。
『…おや、そんな困った顔をしないでおくれよ。私にも、大切な人なら沢山いるよ、家族のような存在だ』
無「…そっか………
…そうだ、Aさんはいつもそのお面を付けてるの?」
『あぁ、そうだよ。
……ふふっ、そんなに気を使わなくていいんだよ。この面に深い意味はないからね』
そ、そうなのか…てっきり火傷の跡とか切り傷とかを隠すためかと……鬼殺の剣士って言ってたし…
『…あら?何やら思案顔だね?本当に違うんだよ?見てみるかい?』
無「えっ、いいの…?!」
『おっと、そんなに食いつかれるとは…
…あんまり期待しないでおくれよ?』
そう言ってAさんは、ゆっくりとお面を外した。
無「……わぁ………!」
僕は、あのあまねさんという人を白樺の精と例えたが。
彼女が精なら、今目の前に居るこの人は、悪魔のような美しさと言う他なかった。
美しいと一声に言っても、白く微笑むその中に紅く妖しく可憐な蓮の華が一輪添えられているような、そんな印象だった。
ほんとうに、綺麗な人だと思った。
僕は思わず感嘆の声を上げた。
『…ふふ、どうやら喜んでもらえたみたいでよかったよ。
……そろそろ家に着くね、お別れだ』
無「…あ、本当だ……
ねぇAさん、明日も来てくれる…?」
僕の言葉に、彼女は心底嬉しそうに笑って勿論だと返した。
その後、Aさんは兄さんと話をしていたらしいあまねさんと帰っていった。
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うさぎもち - 無一郎かわええ・・・ (8月5日 16時) (レス) @page47 id: 6ed501a3ba (このIDを非表示/違反報告)
冰輪(プロフ) - 無惨のママみがつおい……w (8月1日 0時) (レス) @page27 id: 3dfd0d46a5 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - いつも楽しみにしてます最新頑張ってください応援しています (2021年5月21日 22時) (レス) id: 15c1247fea (このIDを非表示/違反報告)
りぽE - 錆兔好き…。 なんでこんなイケメンなん??錆兔と義勇さんに攻められたらやべぇな (2020年6月10日 16時) (レス) id: 15686f771a (このIDを非表示/違反報告)
桃綺薇(プロフ) - 鯖兎に惚れた…… (2020年4月20日 18時) (レス) id: 3e7a0f8c20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M2 | 作成日時:2020年1月18日 22時