13.修羅場のようです。 ページ15
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彼は私がすぐに出迎えに来ないことを不思議に思ったのか、辺りをキョロキョロと見回し始めた。
もしかして、探してくれているのだろうか。
私とこのお客様がいるのは一番奥のテーブル席である。玄関からは見つけにくい位置にあるのだけれど彼はすぐに私を見つけてくれたようで。にっ、と笑う彼の笑顔に胸が高鳴った。
そしてそのまま彼はこちらに来ようとして__ピシリと固まった。
正確には、このお客様の顔を見て。
*
「おい糞太宰。なんで手前が此処にいる。」
「偶々良いお店があったから入っただけだけど?それにこちらの店員さんも美しければコーヒーも美味だ。全くもって素晴らしい店だよ。」
「美しいだとォ……?巫山戯んなよ青鯖ァ!誰の許可を得て此奴を口説いてやがる!」
「彼女を口説くのに許可がいるの?……なるほどねぇ!ぷぷぷ!」
「良い度胸だな表出やがれ。」
お客様が少なくて助かった。いや本当に。「店内ではお静かにお願いします」なんて言う暇もない。
未だかつて見たこともないほど憤怒している中也さんと、彼の知り合いらしい太宰(?)さん。このやり取りから見るように彼らが犬猿の仲らしいというのは理解した。
あの優しい中也さんがこれだけ憤っているのだ。理由は分からないけれど。
しかしまぁいい加減止めなければ。これでは営業妨害である。
まぁまぁ落ち着いてください、と中也さんをなだめてから、貴方も煽るような発言はお控えください、と太宰(?)さんにも注意をする。
喧嘩両成敗というやつだ。中也さんだけ少し優しくなったのはきっと気の所為。
太宰(?)さんは「中也の所為で店員さんに怒られてしまった」と大袈裟に溜め息を吐いてから、「また来るよ、今度はそこの蛞蝓がいない時にでも」とお代を机に置いて帰っていかれた。
ちらりと中也さんを見るとやはり怒っていて。どこまでも中也さんを怒らせるのが上手い人だとある意味感心すらしてしまった。
彼らのやり取りを聞いているうちに他のお客様は帰っていかれてしまったらしい。まぁ元より少なかったからあまり変わらないけれど。
静寂が店に訪れる。
そしてそのことに気が付いて、あ、となった。
__また、二人きり。
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村人C - 神に祈りを(//∇//) (2022年6月8日 21時) (レス) @page24 id: 22d4be940f (このIDを非表示/違反報告)
M - 凄く美しい(?)なんかもう言葉に表せない程好きです。神様素敵帽子君が尊すぎです。夢主の性格も可愛らしくて吐血しそうでした。もうトゥンクが凄いです!! (2022年5月8日 15時) (レス) @page24 id: e7b90db1c1 (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 否、可愛いから付き合いたいな。危険は重々承知してますが。 (2020年6月12日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 『手前』ってか…可愛いね、中也ちゃん。 (2020年6月12日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷる(プロフ) - Uヒさん» コメントありがとうございます!ご満足いただけたようで良かったです!ご愛読ありがとうございました! (2020年4月28日 10時) (レス) id: 9e41ced277 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あっぷる | 作成日時:2019年7月13日 2時