12.心中に誘われるようです。 ページ14
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午後四時。またあの可愛らしい合図が私を呼ぶ。__ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ。あの人じゃないかなと期待する気持ちを胸にしまって。
ニッコリ営業スマイルを武器に。まだ仕事は終わっていない。お客様をお出迎えしよう。
「美しいお嬢さん。どうか私と心中してもらえないだろうか。」
高身長な上に美形。さらには良い声ときたものだ。神は二物を与えないとは嘘だったのか。否、嘘である。何故ならあの人もそうだから。
完璧な青年だった。__いや訂正、その台詞さえなければ。
申し訳ありませんお客様。当店ではそのようなサービスは行なっておりません。もちろん丁重にお断りさせて頂いた。
*
「美しい店員さんに美味なコーヒー。素晴らしい店だ。」
そう言ってコーヒーを飲むその姿は⦅優雅⦆の一言に尽きる。どうしてこの店のお客様は美形が多いのか。私ばかりが肩身の狭い思いをしていることにいい加減抗議したい。
なんて考えを押し込めつつ一礼。さっさと引き返すべく一歩下がろうとして__ぱしり、と。
「まぁ待ち給えよ。こうして私がこの店を見つけて君と出会ったのも何かの縁。もう少しお話でもしようじゃないか。」
ね?とにっこり笑って私の腕を掴む彼に、どことなくデジャヴを感じたのは気の所為ではない筈だ。くっ、なんだかこの人とは話してはいけない気がする。
それに店員が業務時間にお客様と雑談するなんて言語道断。中也さんにジャケットを返した時のような例外はあるけれど。
つまるところ私が彼とお話しする理由はないわけで。
営業スマイルを顔に貼り付けてお断りする。しつこい男性は嫌われますよ。
しかし彼は引かない。えっ、私に何かあるの?
ちっとも引かない彼に困り果てて、もうこの人出禁にしようかな、なんて考える私は悪くない筈だ。申し訳ないが彼に構っている暇は無い。だって。これからあの人が来るのだから。
__彼に会いたいと思う気持ちを隠しきれていないことには気が付かないフリをして。
そしてやはりこんな押し問答をやっている暇は無かったのだと、その合図を聞いて私は深く後悔することになるのだった。
__カランコロン。
ああ、彼が来てしまった。
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村人C - 神に祈りを(//∇//) (2022年6月8日 21時) (レス) @page24 id: 22d4be940f (このIDを非表示/違反報告)
M - 凄く美しい(?)なんかもう言葉に表せない程好きです。神様素敵帽子君が尊すぎです。夢主の性格も可愛らしくて吐血しそうでした。もうトゥンクが凄いです!! (2022年5月8日 15時) (レス) @page24 id: e7b90db1c1 (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 否、可愛いから付き合いたいな。危険は重々承知してますが。 (2020年6月12日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 『手前』ってか…可愛いね、中也ちゃん。 (2020年6月12日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷる(プロフ) - Uヒさん» コメントありがとうございます!ご満足いただけたようで良かったです!ご愛読ありがとうございました! (2020年4月28日 10時) (レス) id: 9e41ced277 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あっぷる | 作成日時:2019年7月13日 2時