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けたたましく朝を伝えるアラームが鳴り響き、豪炎寺は目を覚ました。7時だ。そろそろ準備をしなければとベッドから離れ難い気持ちを振り払い、リビングに出る。
「……A?」
学校がある日ならば割と早起きなはずのAはそこにはおらず、部屋も暗い。どうやら、豪炎寺の方が彼女より先に目覚めたらしい。昨夜自分に膝枕をしてまともに眠れていなかったせいか。それとも、特訓とやらの疲れが取れていないのだろうか。恐らくは両方だと検討をつける。
原因の一端に自分がいる以上起こしてやらなければと一息つき、Aの部屋の前に立った。彼女の部屋になんて入り慣れているはずなのに、妙な緊張だ。
二回ノックをしてみたが、返事はない。
「……入るぞ」
なるべく音を立てないようにそっと部屋に滑り込む。……が、すぐさまどうして自分はこんな忍者のような真似をしているのかと我に返った。
気を取り直して膨らんだベッドに近づくと、Aはすやすや寝息を立てていた。
「A、起きろ」
「う……ん?」
「遅刻したいのか」
「ん……」
意識は微かにあるが脳が働いてないようで、Aはぽやぽやと返事をする。仕方なく彼女の身体に腕を回して無理矢理抱き起こすと、そのままの勢いでくたりともたれかかってきた。
「っおい!」
「!?」
焦った豪炎寺の声でAはしっかり目が覚めたようで、時計に目をやると顔を青くする。
「もうこんな時間!? 修也、起こしてくれてありがとー!」
「あ、ああ」
ばたばたと忙しなく部屋から出ていったA。取り残された豪炎寺はうるさく鳴る心臓と妙に熱い顔を自覚し、額に手を当てる。
「……なんなんだ、朝から」
「忘れ物!」
「!?」
出て行ったと思っていたAが戻ってきた。豪炎寺の様子には気づくことなく、彼女は机の上に丁寧に置いてあった髪飾りを手に取る。彼女がいつも髪の左側に付けている月がモチーフのそれは、豪炎寺が数年前にプレゼントしたものだ。
「……大事にしてくれてるんだな」
「一番のお気に入りだからねー」
「贈った甲斐がある」
やはりAには月が似合うなと零すと、少しはにかんだような笑顔が返ってくる。
朝から散々な目に遭ったが、彼女のその表情が見られただけで報われたような気分になった。
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少し書き方を変えたので、全話修正しました
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作者名:おひめ | 作成日時:2022年7月14日 17時