第十六話…消えてしまった儚い命 ページ16
そう思ってしまったらもう、身体は動いていた。
引き取り先の母、友梨と買い物をした帰り、絵美はわざと友梨の方に走ってくる自転車を注意せずに通り過ぎた。
そして自分の方に迫ってくる自転車に気付く事なく自分の腹を擦っていた友梨は、前方不注意で自転車と衝突してしまった。
―――流産
その言葉は友梨と引き取り先の父、仁に重くのし掛かり、友梨は所構わず泣き崩れた。
でもそれを嘲笑っている小さな少女、絵美には嬉しさしかなかった。漸く自分が愛されるチャンスが巡ってきたのだ。お腹の中の子供はもう居ない。幸せは奪われずに済む。
そう思った絵美は嬉しくて眠れなかった。
―――明日からどんな風に私に笑いかけてくれるんだろう。
流産を告げられ情緒不安定になってしまった友梨と、それを目の当たりにして悲しみに暮れている仁が絵美に笑ってあげられる程心が広い訳ではないのに、絵美は盲目だった。
「ねえお母さん。ご飯は?」
「ごめんね…絵美。お母さん今具合悪くてね。パンがあるからそれ食べてね」
「……なんでよ。もう赤ちゃんは居ないんだから具合悪くなんかないでしょ」
「なっ…!でもね絵美、お母さんもお父さんもずっとあの子が生まれてくる事を楽しみにしていたの。だからどうしても立ち直れないのよ。分かってね」
「だからっ!もう居ない子なんか気にしたって戻って来ないんだから無駄でしょ!?」
「ッ絵美!なんて事言うの!?そんな酷い子に育てた覚えはないわよ!!」
「う、うっ…うえーん!!おとぉさぁん!!」
―――これが親子の間に亀裂が入った原因となる出来事だった。
第十七話…孤独な少女はただ愛されたかった→←第十五話…再び奪われる居場所
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海砂(プロフ) - 蓮々さん» ありがとうございます。過去を考えるのも難しいのですがそう言ってもらえるととても報われます。頑張ります。 (2015年10月23日 7時) (レス) id: b9184114f0 (このIDを非表示/違反報告)
蓮々 - いえいえ!そんな事ありませんよ!この作品の悪女たちはわがままで強欲で思い上がってるだけの例を挙げると空色シリーズに出てらっしゃる秋山のような同情の余地すらない悪女とは違いますから!これからも辛い過去で悪女になってしまった子達を救ってほしいです^^ (2015年10月23日 0時) (レス) id: 257f675689 (このIDを非表示/違反報告)
海砂(プロフ) - 蓮々さん» 貴重なご感想ありがとうございます!前作にもあるように天羽ちゃんは根っからの悪女は居ないと言っているので、その筋道に合わせようと思っています。頑張ります! (2015年10月22日 22時) (レス) id: b9184114f0 (このIDを非表示/違反報告)
蓮々 - この作品の悪女には幸せになってほしいって願わずにはいられません!絵美ちゃんにも本当の愛が見つかるといいですね^^ 更新頑張ってください! (2015年10月22日 19時) (レス) id: 257f675689 (このIDを非表示/違反報告)
海砂(プロフ) - 青息吐息さん» どうもありがとうございます!頑張ります! (2015年10月21日 5時) (レス) id: b9184114f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小泉 海砂 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2015年10月11日 9時