魔法の薬【あんスタ】 (ページ11)

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ep.10 ページ11

今日はお休みのはずだった。
そう、ほんとにおやすだったはずなのだ。

「真緒さんでお間違いないでしょうか？」
真「あ、はい。間違いないです。すいません今日お休みでしたよね……」
「全然いいんですよ、花粉お辛いですよね」
真「ほんっとにすいません…………」

今日は休みだからと浮かれて外に出た矢先、目と鼻を真っ赤した真緒さんが扉の前でCLOSEという文字を凝視しているのを見てしまった。
別に大きな用事はなかったから、慌てて真緒さんに声をかけて店を開けたんだけれど、真緒さんじゃなければ開けなかっただろう。

イケメンだったんだもん…
花粉でやられてるから、犬の耳見えたもん……

「真緒さん、とりあえずこれだけ飲んで貰えます？」
真「なんですか？これ」
「んーと、呼吸を促すみたいなやつですね。簡単に言えば。今の真緒さん、鼻やられてて口呼吸なってますし、少しでも鼻の詰まりを良くするための薬です」
真「そんなんあるんですね…助かります……」

真緒さんは水と薬を受け取ると、一気に飲み干した。
…喉仏まで素敵………
今までは、やられてるイケメンって言っても大方外傷だったり他人の病気だったりしたけれど、真緒さんみたいに自分がやられてる方ってあまり来られなかったから新鮮だ。
ダウンしてるイケメンの需要ありすぎる……

「30分もすれば効くと思いますよ。」
真「すいません、休日だったのに…」
「患者さん放っておく方が問題ですよ。」
真「ありがたいです。そういえば、ここってAさんが1人でやられてるんですか？」
「昔は父と母が営んでたんですけど、亡くなってしまって。今は私一人です」
真「あ、そうなんですね…。その、彼氏とかって…」
「あはは、いませんよ。居たとてしても、薬屋やってる女の男なんてろくな奴じゃないです」

変な薬草取ってきては潰したり燻したり。
そんな奴に付き合えるやつなんて居なかったし。

真「おれは、素敵だと思いますよ」
「へ？」
真「Aさんのこと、素敵だと思います。事実、おれこうやって助けてもらいましたし」

なんて笑う真緒さんを見て、なんでか背筋が凍った。
イケメンからそんな言葉を言われるなんていつもの私ならきっと昇天ものだと思う。
でも、真緒さんのはたぶん、嘘ついてる。
社交辞令とはまた違う。
ふと、なんでかそう思った。

きっと、真緒さんは嘘をつくのが下手だ。