真実:1 ページ21
ふと意識が浮上してゆるゆると目を開ければ、自室の天井が真っ先に視界に映った
部屋の中はぼんやりと黄昏色に染まっており、換気のためか僅かに開いた窓から夕闇の濃い匂いが風と共に漂ってくる
____遠くで、猫の声が聞こえたような気がした
赤司は、瞬きを何度かして状態を起こそうとしたが、傍らに自分以外の気配を感じてそちらに視線を向ける
それは、誰でもない、赤司の手を握ったまま掛布に顔を埋めているAの姿
Aは赤司が覚醒した気配を察知してか、ゆっくりと顔を上げた
「、、、倒れたって聞いて、耳を疑ったよ」
「心配はしてくれないの?」
「したよ。だから、見ての通り着の身着のまま走ってきたんだから。
、、、顔色、良くなったね。私が駆けつけた時には死人のような顔だったよ」
表情にも、声にも安堵が滲んでいた。
Aは繋いでいる手とは反対の腕を伸ばし、赤司の頬に手を添えた
それに応えるようにして、鋭利な双眸が細められる
赤司が倒れたと聞いて、荷物を持たず慌てて車に乗り込み、赤司が搬送された赤司家の屋敷へ駆け付けると
自室のベットの上に力なく横たわる片割れの姿があった
元から白い赤司の肌は、病的なまでに蒼白く映るが、苦しげな様子ではなく、ただ眠っているだけだったのでAはほっと息を吐く
既に処置は終わっているのか、側でバイタル測定を終えた主治医は大事ないと告げてくれた
発作を起こし、意識を消失したものの、精神安定剤を投与することで徐々に落ち着いたため後遺症も残らないだろうと、
幼い頃から二人を診てくれている緑間の父は安心させるように微笑んで退室をした
そしてそのまま赤司が目覚めるまで別途の横の椅子に座り続けていた
幼少期に何度か同じような場面に遭遇してきたが、成長してから
特に赤司は、短時間離れていただけで発作を起こして意識を失う様なことは皆無であったのに
彼に何があったというのだろうか。
「どうしたの」
「何が」
「私ならともかく、赤司がこんな短時間で発作を起こすなんて、今まで無かったでしょ?」
「、、、お前は、本当に覚えてないんだね」
「、、、何を?」
Aの問いには応えず、身体を起こした赤司は徐に立ち上がって窓辺へ移動した
訝しげな眼差しのAを一瞥し、窓枠に身体を預けて外に視線を向けたまま
静かに語りだした
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明里香(プロフ) - 誤字がありました。「呪われているの体質」ではなく、「呪われている体質」です。 (2018年9月21日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
*杏花*(プロフ) - すごく寂しいです。お元気ならいいのですが...またいつか、このような素敵なお話を書いてくださる日を楽しみにしています。本当に素敵な作品をありがとうございます。私の出会った作品の中で、きっと不動の1位なんです、これ! (2018年8月6日 0時) (レス) id: fa9f0c3f67 (このIDを非表示/違反報告)
*杏花*(プロフ) - このお話が書かれていた当初も読ませていただいてましたが、最近になって追記があり、またもう一度読みたいな!という気持ちになりました。...何度読んでも本当に虜になるようなお話だと思います。これを読んでいる時は物語自体に魅了されているような気持ちです...! (2018年8月6日 0時) (レス) id: fa9f0c3f67 (このIDを非表示/違反報告)
キセキ(プロフ) - 舞蝶月姫さん» ありがとうございます!ただ、自分の欲望のままに書いたものだったので、、、。単行本なんて夢のまた夢の話ですね。ありがとうございます (2017年10月22日 15時) (レス) id: e42de48abf (このIDを非表示/違反報告)
キセキ(プロフ) - らららさん» ありがとうございます!3回!?3回ですか、、、!驚きです。続きは今書いている物が落ち着いたらにしようかと思います!それまで、暫しお待ちを! (2017年10月22日 15時) (レス) id: e42de48abf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キセキ | 作成日時:2017年9月18日 18時