111Q 倒れてと覚まさなくてとそれから熱くて ページ16
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仁科が出て行くと、保健室はしんと静まり返った。
未だ虹村に支えられているAは少し気まずそうに視線を泳がし、口を開いた。
「あ、あの虹村君……そろそろ離し……」
ぎゅうう。
肩に回された手に力がこもり、さっきよりも強い力で抱き寄せられる。
「え、えと、虹村君?」
「………した」
「え?」
「………心配、した」
はっとなってAが顔を上げる。
そこには眉を寄せ、どこか不安げな顔をした虹村がいた。
「Aが目の前で倒れて、何度呼んでも目を覚まさなくて、体が俺の体温より熱くて……」
細い肩に回した手が、僅かに震える。
「いやな考えだけが、頭ん中でずっと回ってた」
「虹村、君……」
「A」
頬に片手が添えられ、ゆっくりと持ち上げられる。
「無事で、よかった……」
「っ……、ごめんなさい。心配かけて……」
「俺も気づけなくて悪かった。ごめんな、彼氏失格だな」
そう、どこか情けないような小さな笑みを浮かべ、虹村はAの髪に唇を寄せた。
「虹村君は、悪くないよ」
「ん、あんがと。けど、気付いてやれなかったのは事実だし、お前の体が弱いのも知ってたからな……ホント、ごめんな」
「虹村君……」
じんと頬に熱が集まる。少し前までの熱さとは違うそれは、火照るような熱さで、どこか心地良い。
「A? 少し、顔が赤くなってきてるぞ。熱いのか?」
「へ? え、あ、だ、大丈夫。な、なんでもないから」
「なんでもないわけないだろ。気分でも悪いのか?」
「ほ、本当に大丈夫だから。た、ただ……」
「ただ?」
どう言いわけしよう。虹村の優しさに惚れ直したなんて恥ずかしくて言えない。今更だとは思うがやはり恥ずかしい。
――えーと、えーと……。
ぐるぐると頭を回転さえながら口走ったのは――。
「た、ただ、さっきの……ぷろ、プロポーズ、思い出しちゃって……」
真っ直ぐな瞳で、真っ直ぐに告げられたそれ。例えそれがお題の内容だったとしても。
「嬉しいなぁ、って……」
言って、後悔する。
こちらもある意味恥ずかしいもので墓穴を掘った、と。
「え、あ、や、ちがっ、違わないけど……! ええと、だから、その……」
わたわたと慌てふためく彼女に、虹村は――――。
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黄葉氷雨(プロフ) - これ大好きです!!!思わず一気読みしちゃいました!続きが気になります…いつまでも待ってますよー (2016年2月25日 14時) (レス) id: 2846151982 (このIDを非表示/違反報告)
ユミキ - この作品大好きです!!にじむー超カッコイイ!更新は急がなくて大丈夫だと思うので、きちんと完結した作品にしてください!!!お願いします!m(__)m (2016年1月5日 22時) (レス) id: 2cdc7b326e (このIDを非表示/違反報告)
はるち - 凄く面白かったです!!虹村さん男前すぎます!!キセキの気持ちがわかります!!期待してます!! (2015年12月30日 13時) (レス) id: 3cc41fe1af (このIDを非表示/違反報告)
紅葉−KUREHA−(プロフ) - 時計ウサギさん» 時計ウサギ様、コメありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです(*´∀`)更新が落ちていますが気長に待っていただけると幸いです(;^ω^) (2015年12月10日 22時) (レス) id: 5687a48801 (このIDを非表示/違反報告)
時計ウサギ(プロフ) - 最初から一気に読みました♪虹村先輩カッコよすぎです!!続き楽しみにしてます♪ヽ(´▽`)/ (2015年12月10日 21時) (レス) id: 93ddaea698 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉 | 作成日時:2015年7月1日 0時