【黒子のバスケ】空と虹とそれからキセキ３【虹村修造】

109Q　熱いと揺れるとそれから苦しい ページ14

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　目の前の出来事に、Aの思考は止まった。止まったまま漸(ようよ)うと開いた口からは小さな声。

　それの意味さえも分からないまま答えると、虹村が少し恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに笑った。

　途端、耳をつんざくような黄色い歓声が沸き起こった。

　その歓声にはたと我に返ったA。けれどその顔はまたたく間に赤くなった。

『オレが生涯、愛を誓えるのは…たった一人だ』

『お前だけだ』

『『修造』でいい…A』

『妃になって欲しい。オレの妻は生涯、お前だけだ―――』

　脳内で繰り返された言葉の意味をようやく理解したAは、次いでピシリと音を立てて固まった。

　――……え？ ちょっと待って……。

　自分はこの問いに、なんと答えただろうか。

「〜〜〜〜〜〜〜っっっ!?」

　顔全体に熱がこもる。はくはくと開閉する口から音が出ず、握られた手と触れられている頬に意識が注がれる。

　目の前にいる彼を、直視できない。

　ぐらぐらと視界が揺れるのは頭がオーバーヒートを起こしているからだ。

　起こった出来事を受け入れたいような受け入れたくないような、言われた言葉を信じたいような信じたくないような感覚。

　どくどくと脈を打つ心臓がいつにも増してうるさい。

　体が熱い。視界が揺れる。声が出ない。

　この感情はこんなにも熱くて、こんなにも苦しかっただろうか。

　ぎゅっと胸辺りを掴み、荒れる息を整える。

　――ああ、どうしよう……。

　おかしくなりそうだ。

　目の前にいる彼(虹村)が、愛おしくてたまらない。

　不意に、一際大きな揺れがAを襲う。

　ぐらりと大きく傾いて、景色が遠のいて行く。

　耳朶に響く声がどこか焦っている。

　それが大好きな人の声なのは、きっと気のせいだ――。

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