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リノリウムの床の上に上履きのパタパタという音が響く。
 しばらく廊下を歩いていた平子は、微かに霊圧を感じ、空き教室の前で足を止めた。
 こっそり扉を開けると、沙夜が部屋の片隅で座り込み、声を押し殺しながら泣いていた。
「……沙夜ちゃん」
 声をかけられ、沙夜はビクッと肩を震わせたが、目を擦ってから振り向いた。
「……平子くん、サボり?」
 両目の下には酷い隈ができている。
「サボりちゃうわ。早退や」
 言いながら、平子は沙夜の隣に座った。
 そのまま5分ほど経っただろうか。膝に顔を埋めながら、沙夜はポツリと呟いた。
「私、このまま消えちゃうのかな」
 その時、沙夜の身体が引き寄せられた。
 腕が背中に回され、平子の胸の中に閉じ込められる。
 シャツ越しに、平子の体温と鼓動が伝わってきた。
「消えへんよ。沙夜ちゃんはここにおる」
 沙夜の存在が周囲から失われていることを、平子もまた感じていた。
 そして、それは自分や一護といった霊力の強い者にしか認識できない。
 つまり、死神であれ何であれ、沙夜がこの世に存在する者でないことの表れだった。
 平子に抱きしめられると、沙夜は不思議な懐かしさと安心感に包まれる。
 背に腕を回し、顔を押し付け声をあげて泣いた。
 平子は幼子をあやすように、沙夜の背中をポンポンと一定のリズムで叩いた。

 沙夜が平常心を取り戻すと、平子はゆっくりと身体を離した。
「ほな行こか」
 差し出された手を取る。
「……どこへ?」
 沙夜を引っ張り起こすと、平子は意味深に微笑む。
「沙夜ちゃんに来てほしいとこあんねん」
 そう言い、平子は沙夜の背中と膝裏に手を差し入れて持ち上げた。 いわゆる"お姫様抱っこ"の体勢である。
「え⁉︎ ちょっと‼︎」
「しっかりつかまっとき!」
 そのまま、平子は躊躇なく窓から飛び出した。

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設定タグ:BLEACH , 平子真子 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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kocha28012(プロフ) - めっちゃ面白かったです!続編待ってます! (12月30日 1時) (レス) @page44 id: a73870853f (このIDを非表示/違反報告)
ねーぶる。(プロフ) - 高評価ありがとうございます! 恐れ入りますが、この小説は名前固定(オリキャラ)とさせていただいてます。それでもよろしければ、引き続きお楽しみください♪ (7月25日 8時) (レス) id: 6d62d65eb7 (このIDを非表示/違反報告)
なでこここ - めっちゃ面白いです!!名前変換だけできてない箇所があるので直してくださると嬉しいです🥺💕 (7月25日 6時) (レス) @page3 id: bdaf2286ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねーぶる。 | 作成日時:2023年7月3日 13時

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