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28話 ページ28

その小さな手を、今でも覚えている。








「おにちゃ!」




拙い言葉で俺を呼ぶその声を今でも覚えている。




握った手があまりにも小さくて儚くて驚いた。









家族が死んでしまった後も、この小さな宝物は俺が守らなければいけないと思った。









俺は歳端の同じ炭治郎とAを重ねていた。きっとAが生きていたらこれくらいの背丈だっただろうか、






髪が伸びただろうか、






あの屈託のない笑顔は変わりないだろうか、






俺の横にいてくれただろうか、









「那田蜘蛛山の件について知ってることがあったら教えて欲しいんですよ」


「……凄い異臭でした」








ある日の柱合会議で妹に良く似た声を耳にした。



驚いて顔をあげれば少し大人びて背が伸びたAがそこにいた。









間違えるはずがなかった、他人のわけがなかった。








「…元気にしていたか」

「嫌い。」





話をしたかった。





その手を握りたかった、





触れて生きていることを確認したかった。





そして、謝りたかった。


約束を違えた事を。でもAは泣きそうな表情をしていたから、









きっと色々な感情が詰まった“嫌い”という言葉だったのだろう。


元々言葉にするのが上手な子ではなかった、だが表情は豊かだった。その表情を見てすぐに分かった。






Aが俺へ向けるトゲだらけの視線を、


何かを諦めてしまったような口を、









「大っ嫌い…っ」




俺は最低なことをした。



酷いことをした。癒えない傷をお前の心につくった。







ただ一つ、お前を嫌いなはずはないんだ。





もしそうなら自分を犠牲にしてまでお前を犬から庇ったりしない。




そうなら、お前が怪我をしたと聞いた時、全て投げ捨てて蝶屋敷へ向かって胡蝶に馬鹿にされることもない。




伊黒からお前が倒れたと聞いて、あれほど取り乱したりしない。



柱合会議でお前の姿を見て胸がいっぱいになったわけがない。









「そんなわけ、ない…だろう」




俺がお前を嫌いになるなんてありえない。



たった一人の妹であるAを、兄である俺が嫌いになるわけがないだろう。






俺は言葉が上手くないからまたお前を傷つてしまう。


でもいつか、Aが許してくれるならばお前を抱きしめて謝りたい。








また、雪降る日をAと手を繋いで歩きたい。

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柊蓮(プロフ) - 毎年、誕生日に読んで号泣してます…大好きです。この作品も、同じ作者様の作品も。ついに夢主ちゃんとおんなじ16歳になりました…来年もまた読みに来ますっ素敵な作品を本当にありがとうございます。 (2月9日 1時) (レス) @page50 id: 4d2be51c25 (このIDを非表示/違反報告)
芽依 - ボロ泣きです、、最高です、後日談までもう泣けてくるんですが、、すれ違う兄妹の書き方が神ってますね、素敵な作品を読ませていただきありがとうございました、、! (1月30日 10時) (レス) @page50 id: e9435a06b7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 涙止まりませんでした、、、出会えて良かったです、、、 (11月24日 13時) (レス) @page50 id: 477ea6ec3d (このIDを非表示/違反報告)
ピンス - 流石に泣きました。後日談も最高です。神作品ありがとうございます… (11月10日 23時) (レス) @page50 id: 18a9383861 (このIDを非表示/違反報告)
てんごく(プロフ) - めっちゃ泣きました。凄い良いお話です (10月5日 18時) (レス) @page50 id: e622d65d6b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:だむい | 作成日時:2020年7月26日 20時

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