27話 ページ27
雪が続く日だった。
「…終わったら必ず迎えに来る。」
「うん!」
1週間後、選別会場まで必ず迎えに行くと約束した。
その間、不安を押し潰すように鬼を斬り続けた。
最終選別が終わる日がやって来た。
十二鬼月を斬った事から仔細報告が必要で本部へ行かなければならなかった。
水柱になった事もあり想定より時間がかかった。
かなり遠くになる選別会場へ一睡もせず、一度も足を止めずに全速力で向かった。肺が千切れても最愛の妹の姿を早くこの目で確認したかった。
「義勇、指令ジャ…雲取山ニテ」
その途中で指令が入り雲取山へ向かった。
指令にあった鬼は確認できなかったが、妹が鬼になったという少年に出会った。
「妹だ、俺の妹なんだ!」
「禰豆子は違うんだ…、人を喰ったりしない!!」
鬼になった妹の歳の端はAと同じくらいだった、昔の自分たちを重ねたからだろうか、泣きすがる少年の話を聞くために失神した少年が目覚めるのを待った。
あまりの寒さに嫌気がした。
「狭霧山の麓に住んでいる鱗滝左近次という老人を訪ねろ。冨岡義勇の紹介で来たと言え。」
早く行かなければ、その一心で目覚めた少年にそれだけ告げて走った。
日数が経ってしまったが、いるはずの、待っているはずの妹の元へ。
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「はっ…はぁ…、A…、どこだ」
口から出る白い吐息で曇る世界でAを探した。
会場に鬼の気配が一切なかった、きっと誰かが全員倒したようで俺は足を踏み入れた。
「………」
鱗滝さんがAに着せていた羽織の切れ端を見つけた。
真っ白い雪を赤く染める線を辿って歩いた。
分かりやすすぎる程にそこだけ真っ赤に染まった、人が一人倒れていたような跡、
そして、鱗滝さんが厄除けとして渡した狐のお面があった。
「……A…」
寒さなのか絶望なのか、震える手でそれを拾い上げた。
血がついていた。
「あ…あぁ……うわぁぁぁぁぁあッッ」
それを抱きしめながら数時間声を張り上げた。
どこを探しても見当たらない、
何度呼んでも返事のない、
「A、A…ッ!!」
俺の手から零れ落ちてしまった宝物、
俺の、たった一人の大事な妹。
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柊蓮(プロフ) - 毎年、誕生日に読んで号泣してます…大好きです。この作品も、同じ作者様の作品も。ついに夢主ちゃんとおんなじ16歳になりました…来年もまた読みに来ますっ素敵な作品を本当にありがとうございます。 (2月9日 1時) (レス) @page50 id: 4d2be51c25 (このIDを非表示/違反報告)
芽依 - ボロ泣きです、、最高です、後日談までもう泣けてくるんですが、、すれ違う兄妹の書き方が神ってますね、素敵な作品を読ませていただきありがとうございました、、! (1月30日 10時) (レス) @page50 id: e9435a06b7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 涙止まりませんでした、、、出会えて良かったです、、、 (11月24日 13時) (レス) @page50 id: 477ea6ec3d (このIDを非表示/違反報告)
ピンス - 流石に泣きました。後日談も最高です。神作品ありがとうございます… (11月10日 23時) (レス) @page50 id: 18a9383861 (このIDを非表示/違反報告)
てんごく(プロフ) - めっちゃ泣きました。凄い良いお話です (10月5日 18時) (レス) @page50 id: e622d65d6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だむい | 作成日時:2020年7月26日 20時