くれぐれも内密に(1) ページ8
・
「……と、言うわけで……」
数日後。
いつもの撮影を終えた私は、泉さんの楽屋に来ていた。
そこで聞かれた『DREAM AUDITION』のことを伝えている。
最終予選に落ちたことも、スカウトのことも
私なりの総合評価も。
「む、無理でした」
自信なさげな声で、会話を締めくくられる。
泉さんは机に肘をついたまま、呆れ顔だ。
暫くそのまま私を見つめたと思ったら、大きなため息。
「あのねぇ……、そういう話は受けときなよ」
「いやいや、プロデューサーですよ?」
「あんたがしようとしてたアイドルの方が無理だっての」
「それは免除あるって書いてたんで!」
「変なところで真面目だよねぇ……!」
だんだんと怒り始める泉さんは、私の頬をつねる。
痛いと反抗するが、呂律が回らず自分でも不明な声が出る。
「あんたと通えるとか、期待した俺が馬鹿だった」
なんとか離してもらえて、頬を抑えてると
泉さんが珍しく、本音らしきものを漏らす。
突然のことで頭が回らず、とりあえず泉さんを見つめる。
その瞬間、我に返ったように誤魔化し出した。
「ち、違っ、そういう事じゃなくて」
「でも!そういうことですよね?!」
「違うっつってんでしょぉ!?チョーうざぁい!」
「あだだだ?!泉さん髪の毛はやめてください!」
照れ隠しでも髪の毛は禿げますから!
なんて言えば、髪をわしゃわしゃと攻撃される。
それでも私は、嬉しくて笑みがこぼれる。
ほんのちょっとでもいい。
泉さんが、私といることに意味をかんじてくれてる。
それだけで救われる、自分を取り戻せる。
勇気がでる、向上心が湧く、歩き出せる。
「泉さん」
泉さんの、その想いがあるだけで。
「私、泉さんが大好きですっ」
私は、強くなれるから。
「……知ってる」
泉さんは首に手をあてがって、そっぽ向く。
照れてる時のその反応が、堪らなく愛しくて。
「泉さん」
「なに」
「呼んでみただけです」
「……チョーうざい」
ねぇ、泉さん。
あなたと両想いになれる日を。
堂々と隣で笑える日が来ることを。
期待しても、いいですか?
「……ん?なんか言った?」
突然、泉さんがこっちを向く。
でも、私は何も言ってないはず。
私は頭を振って否定する。
……え、まって。じゃあなに、こわい。
『あっ、あった、この部屋だ』
……ん?確かに聞こえる。
しかもこの部屋って、ここのこと?
「……ちょっとまって、もしかして」
『あー、やっぱここか』
その声と同時に、楽屋のドアが開かれた。
くれぐれも内密に(2)→←『DREAM AUDITION』〜天祥院英智〜
481人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
莉緒(プロフ) - すいかさん» 返信遅くなりすいません!コメントありがとうございます!これからも面白いお話が出来るよう、頑張ります! (2018年11月7日 22時) (レス) id: 013457e9b7 (このIDを非表示/違反報告)
すいか - 面白いです!! (2018年10月24日 6時) (レス) id: 1cbfe77de4 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒(プロフ) - 愛姫さん» コメントありがとうございます!これから楽しんでいただけるよう、頑張りますね! (2018年1月25日 17時) (レス) id: 9db52594cb (このIDを非表示/違反報告)
愛姫 - いつも楽しみに見てます!!これからも頑張ってください!! (2018年1月25日 13時) (レス) id: 43b6895a40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ