２３、イケメンですね ページ23
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店員が在り来りな言葉で賞賛する。
なんか目が笑ってねぇんだけど。
｢でも……、確かに可愛いな｣
真っ白なワンピースは少し金箔がかかってて
黒のジャケットが栄えている。
まったく着たことのないジャンルだ。
｢似合ってるじゃん｣
鏡の前で狼狽する俺に、瀬名が発した。
そんな瀬名に思ったことが、口をついて出る。
｢……すげぇな、これ｣
｢この俺が全身コーデしてあげたんだから当然でしょ〜｣
そう言いながら、足元に靴を置く。
黒と白の、チェック柄のパンプスだ。
｢おいで、A｣
瀬名が手を差し伸べる。
何も考えず、その手を掴んだ。
瀬名のその言動は、『騎士』と言われるのに相応しいのだろう。
俺でさえ、自分が『姫』だと錯覚させてしまうのだから。
｢うん、やっぱりAは、この方がいい｣
そう口にすると、優しく微笑んだ。
あの時の、頭を撫でてくれた、あの表情で。
鼓動が早くなるのが、自分でも分かる。
俺は何故か、瀬名のこの表情に弱い。
弱みを握られて、足元を救われてるはずなのに
なんで、今更……。
｢あの〜？お客様、お会計よろしいでしょうかぁ？｣
｢へっ？｣
突然女の人に声をかけられて、我に返った。
そうだった、ここ店だった。
わかった時には遅かったのか
店員さんがなんかものすごくキレてる。
頑張って笑ってるつもりかもしれないけど
さっきと一緒だ、目が笑ってねぇぞ。
｢じゃあこのまま着ていきます｣
｢えっ、……俺、金ないぞ｣
｢俺がカードで払うから平気｣
｢くれんの？！太っ腹だなー、瀬名！｣
｢さっきから反応がほんっと女子じゃないよねぇ……！｣
いやいや、くれるっつーなら貰わねぇと。
そう謳ってるの、よく聞くから。
物じゃないとか言われたらおしまいだけど。
｢お客様｣
瀬名の会計を待ってる間、別の店員が来る。
どうやら汚れとかのチェックらしい。
服の店員も、わりと面倒な仕事だな……。
｢素敵な彼氏さんですねぇ？｣
｢美人だしなぁ……、彼氏じゃないんですけど｣
｢あっ、そうですよね〜｣
露骨に嬉しそうだな、おい。
急に態度変えやがって、逆にむかつくわ。
｢瀬名泉似の彼女とか、有り得ませんよね〜！｣
瀬名、バレてるぞ。
って言うか本人に言うことかよ。
この店色々アウトだろ、服は可愛いけど。
やり場のない怒りを抱えたまま、会計を終えた瀬名と店を出る。
｢どうしたの、変な顔して｣
｢お前がイケメンなのが悪い｣
｢大丈夫？１回医者行く？｣
｢どうせななら精神科がいい｣
｢本当に大丈夫？｣
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