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空座決戦編 2-4 ページ10

『ひ、より』


どうしよう、そんな。
どうしよう、どうしよう、


咄嗟に目に入った自身の手。
浮竹へと翳しているそれが情けなく震えていることにようやく気付いた。

頭に過るのは百年前の彼女が照れたように笑う顔。
そしてその奥で濃く混ざり合う重苦しい虚の黒。

仲間ではない。彼らと自分は決して混ざることのない場所にいる。
わかっている、そんなこと

だけど、


「A副隊長!!」


戦場の空気を断ち切る様に、イヅルの声が大きく響いた。


『っ、イヅル‥君‥‥』


Aがゆっくりと振り返る。
大きく見開かれた紫色の瞳。
それは今までに見た事がないほど揺れていた。

錯乱した様子の彼女にイヅルはグッと奥歯を噛みしめる。


「行ってください!大切な、‥大切な方達なんでしょう!!」
『っ、』
「貴女にしか出来ない!」


叫ぶイヅルにAが震える手のひらを強く握りしめる。


「い、ち‥丸‥、」
『ーーっ、浮竹隊長‥!』


すぐ側で、うめく様に聞こえてくる微かな声。


「行け‥!」
彼らは‥敵じゃ‥ないだろ‥う、


汗も拭わぬまま、苦しげに喋る浮竹にAの瞳がもう一度見開かれた。


ーー彼らは敵じゃないだろう。

浮竹の言葉が何度も胸に響いた。
全てが赦された気がした。

死神である自分と仮面の軍勢である彼らの間でずっと不安定に揺れていた心が、計りかねていたその想いが、一言で全て赦された気がした。


『っ、‥はい!』




ーーーー




「ーーー良い眼だ。百年ぶりに生き返った眼を見た気がするよ」

ーー平子真子。


頭上から降りかかる言葉。
平子は余裕も何もかも取り払ってしまった瞳で藍染を睨み上げた。

彼の瞳に滲む憎悪に藍染が微笑みを浮かべる。


「憎いか私が。憎ければ向かってくるが良い」
君は特別に私の剣でお相手しよう。


そう言ってバサリ、と羽織を翻す。

抱いたままのひよ里をゆっくりと地面に下ろして、刀を握ると立ち上がった。

反動でカシャリと斬魄刀が鳴る。
ざり、と踏みしめた地面。


刹那、近づいてくる霊圧に平子は目を見張った。

風を切る音と共に香ったのは、酷く懐かしいにおいだった。


『わたしが、わたしが治します…!』

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設定タグ:BLEACH , 平子真子 , 市丸ギン   
作品ジャンル:アニメ
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おもち(プロフ) - ううさん» 二週目ありがとうございます( ; ; )!現在最初の方から加筆修正中で読みにくい点もあると思いますがぜひいつでも読んでいってください。わたしもギン乱推しなので、二人の妹になりた過ぎてこうなりました笑これからもよろしくお願いします! (2020年12月20日 0時) (レス) id: 1513b391e8 (このIDを非表示/違反報告)
うう - 全部読んで2周目です。ギン乱推しなのです最高です。ありがとうございます。もっと他の人にも読んで欲しい作品です。 (2020年12月20日 0時) (レス) id: bccb65748a (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - もももさん» 文字が多くて分からずらいとこが多かったですよね( ; ; )!読んでくださりありがとうございます! (2020年9月6日 0時) (レス) id: 1513b391e8 (このIDを非表示/違反報告)
ももも - ぶっ通しでしっかり読ませていただきました!!これはもうぶっ通しで読まなきゃいけないシーンですね!!(*´∀`*) (2020年9月5日 22時) (レス) id: ce0dea41c8 (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - もももさん» そう言っていただけて嬉しいです!ここのお話はどうしてもぶっ通しで読んでいただきたくて、遅くなってしまいました‥( ; ; ) (2020年9月5日 19時) (レス) id: 1513b391e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おもち | 作成日時:2020年8月24日 21時

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