あなたと生きる世界 ー空座決戦編ー

空座決戦編　8-7 ページ41

「すまんの、A。」
加減はなしじゃ。


その声を残して夜一が消える
瞬神と呼ばれる彼女を目に捉えることは難しい

飛び込んで来た夜一にAも白打で応戦するが
既に息も絶え絶えな状態に
平子がその手を強く握り締める



わかっとる、
Aを止めたらなあかんことも
無理矢理操られてんのも、わかっとる

しゃあけど、Aが
ああなってしもうたのは‥っ、

あの夜、俺があいつの気持ちに寄り添わんと置いてったからや‥！



『ーーわたしを、殺して。』

そう言って見つめた暗い瞳が頭に過る



「っ、くそ‥、」



顔を顰める平子の耳に夜一の楽しげな声が響いた


「なんじゃ、随分と上手く躱す様になったのう！！」
『・・っ、は、‥はっ、は‥っ』


夜一の足を後方に避けるAは未だに息も荒く
その霊圧はひどく揺れている


「ハァァア！」
『ッ、』

「っ！！！」


夜一の蹴りでAが後方へと弾かれる様に吹き飛んだ
ガラガラガラッ、と瓦礫が崩れる音に平子が焦りを隠さずに叫ぶ


「A‥！！」
「すまんな、平子。」


未だ困惑したままの平子に
背を向けたまま、夜一が呟く


「本気でやらねば、死ぬのは自分じゃ。」
お主もわかっておるじゃろ。

「っ、く、そ‥、」


歪む黄金色の瞳

刹那、砂埃の奥でゆらりと揺れる霊圧に気付き
素早く視線を動かした



『‥動けば、風‥止まれば空‥っ、
槍打つ‥音色、が‥っ、虚城に‥満ちる‥』


Aの息が荒いまま詠唱が聞こえる
瞬時に察した平子が叫んだ


「やめろ！！鬼道を使うたらあかん！！！」
A！！！


ただでさえ魂魄のせいで霊圧が安定しとらん！！
このまま使い続けたらAは‥っ！！！



『破道の六十三 雷吼炮‥っ、』



Aが弱々しく翳した手のひらから
雷の切り裂く音が響き渡る

バチバチッ、と勢い良く空を駆ける鬼道に
夜一が目を見開いた刹那、浦原の声が響く


「縛道の八十一 " 断空 " ！！」


空間を区切るように現れた大きな壁がAの鬼道を弾いた


『っ、‥は、っ‥』

自身の鬼道の反動にふらり、と片膝をついて
荒い呼吸を繰り返すAに
浦原の表情がひどく歪む


「‥これ以上はやばいっスね。」
「っ、喜助‥御主もか‥」


目を見開く夜一が、甚平から覗くその手に視線を奪われた
カタカタと震える自身の手を
他人の手の様に見つめる浦原に夜一が顔を顰めた


「・・ボクじゃないっスよ。」
「っ、莫迦者が。」

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