あなたと生きる世界 ー空座決戦編ー

空座決戦編 ページ2

「ーー待てや」


聞き覚えのない、癖のある声が辺りに響いた。
再びイヅルの目が大きく見開かれる。

途端に藍染の瞳が楽しげに細められたのをギンは見逃さなかった。


「久し振りやなァ、藍染」


そこにはかつて護廷十三隊・鬼道衆にて隊長格を務めていた八人の姿があった。


「・・なんや、えらい懐かしい顔が揃うてるやないの」


遠目に彼等を見つめたギンが穏やかに笑う。
それはまるで古くからの友人と再会したとでも言うかのような、戦場に似つかわしくない微笑みだった。


「何だあいつらは・・！？」


日番谷の翡翠色の瞳が大きく見開かれる。
視線の先には現世の服に身を包んでいながら片手に携えるのは斬魄刀という謎の集団。


「あれは！」
「平子真子・・！！」


酷く懐かしいその姿に砕蜂のみならず、山本元柳斎の目すらも大きく見開かれた。


「やはり現世に身を潜めておったか‥」


呟いた刹那、側で聞こえた風を切る音に視線を逸らす。


『総隊長！』
「ーー市丸」


戦場に似合わない美しい銀髪がひらりと落ちた。
片膝を付き現れたAに、元柳斎が向き直る。


『申し訳ございません。戦況を考慮し、彼らを中へとお通ししました』
「構わぬ。‥御主も出るか」
『はい。三番隊副隊長として、共に参ります』


紫水晶のような瞳が真っ直ぐに元柳斎を射抜いた。


「尽力せよ」
『はい！』


その刹那、再び風の切れる音が響く。
相変わらず気だるげに現れた懐かしい顔に元柳斎の瞳が僅かに揺れた。


「・・恨みを晴らしに来おったか」
「藍染になァ。あんたのことは別にや」

「恨んどるとしたら、あんたらがここにメッチャ強い結界張らせて戦っとったことにやな！」


１世紀ぶりに現れた彼はグッと口角を下げ、親指をAへと向ける。

見慣れない短い髪と、見慣れない帽子。
見慣れない洋装に身を包み、腰に揺れるのは酷く見慣れた刀。


「外でコイツ見つけられへんかったら、永久にこの周りグルグル回り続けとったとこや！」


吐き捨てるように紡がれた言葉に思わず目を見張った。

緊張感のかけらも無い物言いが懐かしい。
皆を気遣う彼だからこその仕草であるということに気付いたあの日はいつだったか。

変わってしまったことの切なさと、変わらないことへの安堵感に胸が熱くなる。

ああ、本当に平子隊長なんだ。と、改めてその横顔を見つめた。

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