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『はぁ・・、』
溜息を零して視線を横へと逸らせば、反射した窓に浮かない顔をした自分が映った。
もう、どうにもうまくいかない。
あの人は上司だ。今は直属では無いにしても。
そんな彼の言葉を遮り、挨拶も無しに飛び出してしまうなんて、本当にどうかしてる。公私混同も甚だしい。
お茶だって用意してくれていたというのに。
『・・嫌だな、こんなわたし』
冴えない顔した自分から目を逸らし、三番隊舎までの道をとぼとぼと歩く。
思い返すのは、二人の会話だった。
ーー届くかァ？桃チャン。
ーーなっ、届きますよ！
ーーおーおー、よう届きました。エラいなァ！
ーーもう！揶揄わないでくださいっ！
ーーそないプリプリしなや。
酷く懐かしく感じられたそのやりとりに、わたしは居ない。
確かに昔はあったのだ。目の前に。手の届く場所に。
そう思ったって仕方がない事くらい理解していた。自分はもう子供ではない。
彼が悪い訳ではない。わかっている。
雛森なんてもっと悪くない。そう思っている。
自身の隊長であるローズにだって、なんの不満もない。
今の環境が嫌だなんて、これっぽっちも思っていない。それでも。
『・・』
それでも、側に居られる雛森を、羨ましいと、そう思ってしまった。
願い続けた過去が、もう二度と手に入ることのない日常が、そこに在ることを知ってしまった。
隊舎へ向かって歩く道すがら、Aは外の景色へと視線を逃した。
夏の訪れにはまだ少し早い瀞霊廷の六月。
少し曇り出した空を見上げれば、ツンと鼻先が痛んだ。
「A副隊長？」
『・・ただいま、イヅルくん』
あと数分で執務室に着きそうな曲がり角。
何処かの隊へ書類を運んでいたのか、執務室へと戻るところだったらしい自身の補佐官と広い廊下で出くわした。
イヅルはAの様子に、普段から困りがちな眉を更に寄せる。
「・・何か、あったんですか」
『ううん、大丈夫』
おかえりなさい。をすっ飛ばして伺った言葉を、彼女は目線を合わせることなく否定した。
自身の目の前をゆっくりと通り過ぎ、執務室へ向かって歩いていく背中を追いかける。
その大丈夫が大丈夫ではない事を、僕はよく知っている。
「お茶でも飲みますか？」
前を歩く彼女の少し後ろを歩く。
ありがと。と小さく返された言葉に再び眉を寄せる。
どうか自分の前だけでも。そう願いながら、今日もまた僕は貴女の後ろを歩くのだ。
掛け違えてしまった糸
(それは不条理に絡まって、)
続く (更新停止中)
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でんでん。(プロフ) - 毎日楽しみで大好きです！ご無理なさらず続きを楽しみにお待ちしております！(^^) (9月8日 2時) (
レス) @page46 id: f6127465a5 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - いいところで……！！！ (5月17日 1時) (レス) @page46 id: 40e8d62194 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 続きが気になります•••！ (2023年4月26日 20時) (レス) @page46 id: c3f7ca38c1 (このIDを非表示/違反報告)
いちか(プロフ) - 大好きです続き読みたいです (2023年4月22日 22時) (レス) @page46 id: e23563eff4 (このIDを非表示/違反報告)
マチリ - 最新話まで読ませていただきました。素敵な作品に出会えてとても感動しております。ご無理なさらずに続きを楽しみにお待ちしております。 (2023年2月25日 0時) (レス) id: 7c2370384d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おもち | 作成日時：2021年5月9日 2時
