検索窓
今日:12 hit、昨日:8 hit、合計:54,894 hit

6 ページ44

一番に、嬉しいと思う。
本当に戻って来たのだと、その声を聞くたびに安堵する。
今の面々とも上手くやれているのだと、心が温かくなる。

そうして二番には、思い起こしてしまうのだ。
百年前にあった日常を。
今は無い、あの日々を。


ーーなんや、ちっとばかし鬼道の腕でも上げたんとちゃうか。
ーーそらそうやろ!お前の隊長やからな!
ーーはァ!?誰にそないな言葉教わってん!惣右介か!?
ーーお前はそうやって楽しそうに笑うてたらええねん。


懐かしいな。そう思って口元は緩んだ。
けれど何故だか、心はチクリと痛んだ。

ああ、そうか。
だってそれは。

もう彼がわたしの隊長では無いことに、他ならないからだ。

少し俯いてしまったAの視界に、真っ白な羽織が揺れる。
ハッと見上げれば金色の髪を揺らして、平子が目の前を通り過ぎていった。

執務室に備えられたソファに彼は沈み込み、「まァ、座りや」と一声かけられる。

彼の誘いに小さく頭を下げて、Aは向かいのソファへと腰掛けた。

なんとなく、ここに居てはいけないような、そんな気持ちになった。
随分と慣れ親しんだはずのこの執務室は、自分の居場所ではないのだと。
そんな当たり前の事にようやく気付いた自分に嫌気がさした。

気持ちを切り替えたくて、何か話していないと泣き出してしまいそうで。
そういえば。と、ふと思い出した事を訊ねてみようと口を開く。


『六車隊長と揉めていたと隊士から聞きました。』
「・・なんや噂になってんのかいな。」
『お二人が揉めるなんて珍しいですね。何かあったんですか?』


瞳を丸くしたAが首を傾げれば、平子は少しだけ目元を歪ませ視線を窓の外へと向けた。
さて、どうしたものか。お前の事だ、と言える訳もないのに。


「・・別に、や。なんもあらへん。」


そう続けた彼の確かな違和感に、再びAが首を傾げる。


『え?でも六車隊長が声を荒げていたって・・。』


そこまで言った途端、聞こえたのは溜息だった。
ハァ、と息を吐き、ソファの肘掛けで頬杖をついた平子が視線を此方へと向ける。


「なんもあらへんって言うてるやろ。」
『・・そう、ですか。』


面倒くさい。そう言いたげな彼の声色と表情に、Aは押し黙るしかなかった。

あぁ、どうしてだろう。
久しぶりに逢えたというのに、今日は何故だかうまく話せない。

7→←5



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (146 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
522人がお気に入り
設定タグ:BLEACH , 平子真子 , 市丸ギン   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

でんでん。(プロフ) - 毎日楽しみで大好きです!ご無理なさらず続きを楽しみにお待ちしております!(^^) (9月8日 2時) (レス) @page46 id: f6127465a5 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - いいところで……!!! (5月17日 1時) (レス) @page46 id: 40e8d62194 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 続きが気になります•••! (2023年4月26日 20時) (レス) @page46 id: c3f7ca38c1 (このIDを非表示/違反報告)
いちか(プロフ) - 大好きです続き読みたいです (2023年4月22日 22時) (レス) @page46 id: e23563eff4 (このIDを非表示/違反報告)
マチリ - 最新話まで読ませていただきました。素敵な作品に出会えてとても感動しております。ご無理なさらずに続きを楽しみにお待ちしております。 (2023年2月25日 0時) (レス) id: 7c2370384d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おもち | 作成日時:2021年5月9日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。