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彼の表情がいつになく強張っている気がする。
機嫌を損ねてしまったのだろうか、と思わず不安に駆られた。
『す、すみません。これです。』
「ローズからか?んなもん、わざわざお前に持たせんとイヅル使うたらええやんけ。」
体調が優れないのなら、尚更だ。と思った。
いつもなら書類関連はイヅルが持ってくるというのに。
『あ、えっと、気分転換に行くようにと言われて。』
「気分転換?」
Aの言葉に平子はわかりやすく怪訝そうに表情を歪めた。
もしかすると先日拳西と揉めた件へ、彼なりの気遣いなのかもしれない。
そう思い平子は少し気まずそうに視線を逸らす。
「あ〜・・すまんな、おおきに。」
『い、いえ・・』
お互い、何故か気まずい空気感を纏っていた。
上手く噛み合わない、とでも言えばいいのか。
何をどう切り出せばいいのか。
今まではどんな話をしていたのだっけ。
そう思って未だ床から視線を逸らせずにいた所、少し離れたところから華やかな声が聞こえた。
「隊長!このお茶菓子ってお出ししてもいいやつですか?」
給湯室から聞こえる声に、平子が視線を向ける。
ひょっこりと顔を出した雛森は何やら上品な模様が描かれた小箱を握りしめていた。
「お?ああ、それか。ええで。」
さすが桃やなァ。ほんま気の利く副官やわ。そう続けた彼は、「よっこい、」と小さく声を上げると自席から立ち上がる。
「その反対の棚にもあったやろ。」
「反対?」
「ちょいまち、」
ザッザッ、と草履の滑る音を鳴らしながら、隊主羽織の背中は給湯室へと消えていった。
「これですか?」
「あ〜・・ちゃうちゃう。」
「コッチやコッチ。」
「あ、そんな所にも!」
「届くかァ?桃チャン。」
「なっ、届きますよ!」
「おーおー、よう届きました。エラいなァ!」
「もう!揶揄わないでくださいっ!」
「そないプリプリしなや。可愛ェ顔が台無しやで。」
「わかりましたから、平子隊長はAさんのところに戻ってください!!」
『・・。』
賑やかに聞こえて来る声達にAは少しだけ口元を緩めた。
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でんでん。(プロフ) - 毎日楽しみで大好きです!ご無理なさらず続きを楽しみにお待ちしております!(^^) (9月8日 2時) (レス) @page46 id: f6127465a5 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - いいところで……!!! (5月17日 1時) (レス) @page46 id: 40e8d62194 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 続きが気になります•••! (2023年4月26日 20時) (レス) @page46 id: c3f7ca38c1 (このIDを非表示/違反報告)
いちか(プロフ) - 大好きです続き読みたいです (2023年4月22日 22時) (レス) @page46 id: e23563eff4 (このIDを非表示/違反報告)
マチリ - 最新話まで読ませていただきました。素敵な作品に出会えてとても感動しております。ご無理なさらずに続きを楽しみにお待ちしております。 (2023年2月25日 0時) (レス) id: 7c2370384d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おもち | 作成日時:2021年5月9日 2時