攫われた太陽 1 ページ32
「・・あまり顔色が良くないですね。」
眉根を寄せたイヅルが言葉と共に僅かに腰を曲げ、自席に座るAの顔を覗き込む。
視線の先の彼女は少々具合が悪そうに見えた。
『あ・・そうなの、ごめんね。』
心配かけちゃって、と続けたAが困った様に笑う。
霊力が戻らなくなって以降、度々目眩や動悸と言った貧血の様な症状に襲われていた。
無理に任務に出た一件から、単独任務はローズの命で禁止となった。
戦闘が予想される任務は基本的にイヅルが引き受け、Aは事務的な執務や会議への参加が仕事の殆どではあったが連日の勤務によって疲れが溜まっていたのかもしれない。ここ最近は特に体調が優れない日が続いていた。
ふぅ、と一つ、ため息を吐いたイヅルが姿勢を戻す。
「隊長もまだお見えになっていませんから、お茶でも淹れましょうか。」
ゆっくりと歩くイヅルはその言葉と共に給湯室へと入っていく。
始業の鐘は半刻程前に鳴ったばかりだ。
チチチ、とガスがつく音が聞こえてAは目の前にあった書類から目を離した。
お言葉に甘えようかな、そう思った時だった。
「Aっ・・いるかい！？」
『ローズ隊長？』
ダン！と荒い音を立てて執務室の引き戸が開いた。
慌てた様に息を荒げるローズが執務室へと転がり込んでくる。
『ど、どうしたんですか？』
何やらただならぬ様子にAが自席から立ち上がり駆け寄った。
給湯室にいたイヅルも慌てて飛び出してくる。
「それが、」
口を開くローズの言葉に被せるように、聞き慣れない低い声が執務室へと響いた。
「どうも初めまして。わたくし、山田家家臣・右京広臣と申します。」
Aは突如やってきた右京と名乗る壮年の男と共に貴賓室を訪れていた。
コトン、と小さな音を立てて置かれた湯呑みに男が目を見張る。
「おや、副隊長ともあろうお方がお茶汲みですか？」
護廷十三隊も随分と人手不足のようだ。と続けた男にAは懸念を抱いた瞳を向けた。
品よく召した着物に上品な臙脂色の羽織。
年齢はローズとそう変わらないくらいだろうか。細く切れ長な瞳からはなんの感情も読み取れそうにない。
『何かわたしに御用でしょうか。』
ピリピリとした空気を纏う彼女に右京は目を細めるとゆるり、と笑みを浮かべる。
その胡散臭い笑みにAの喉が鳴った。
「貴女様に、山田家当主・清之介様との縁談をお願いしたく参りました。」
『！！！』
彼の言葉に大きく目を見開いた。
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でんでん。(プロフ) - 毎日楽しみで大好きです！ご無理なさらず続きを楽しみにお待ちしております！(^^) (9月8日 2時) (
レス) @page46 id: f6127465a5 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - いいところで……！！！ (5月17日 1時) (レス) @page46 id: 40e8d62194 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 続きが気になります•••！ (2023年4月26日 20時) (レス) @page46 id: c3f7ca38c1 (このIDを非表示/違反報告)
いちか(プロフ) - 大好きです続き読みたいです (2023年4月22日 22時) (レス) @page46 id: e23563eff4 (このIDを非表示/違反報告)
マチリ - 最新話まで読ませていただきました。素敵な作品に出会えてとても感動しております。ご無理なさらずに続きを楽しみにお待ちしております。 (2023年2月25日 0時) (レス) id: 7c2370384d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おもち | 作成日時：2021年5月9日 2時
