3 ページ28
「で、どうなんだ？」
「なにがや。」
「Aに決まってんだろ。」
あれから会ってんのか？と付け合わせの漬物に手を伸ばした拳西がその視線を平子へと向ける。
昼食に選んだのは手の平くらいに大きなかき揚げが有名な蕎麦屋だ。
お昼時ということもあって店内は混み合っているが、隊主羽織の男三人はこの空間では明らかに異彩を放っており周りからは随分と浮いていた。
ズズズ、と蕎麦を啜った平子がめんどくさげな表情で顔を上げる。
「そらたまには会うやろ。お隣さんやねんから。」
円状に作られた瀞霊廷では、五番隊と三番隊は隣り合う地区になっている。
その為他の隊舎よりも距離は随分と近い。
それぞれが仕事の最中、すれ違う事だって稀にある。
が、そんな物理的な事を聞きたい訳じゃない拳西は眉根を寄せた。
この男だって自分がそんな屁理屈を待っていないことくらい気付いているだろうに。
「やっぱり相変わらずだな、お前。」
本当に相変わらずだ。百年以上経っても相変わらずだ。
彼女の事になると、捻くれてどうしようもない男だ。
隊長になるまでは来るもの拒まずで女にうつつを抜かしていたというのに、あの面影はどこに行ってしまったのやら。
なにがやねん、と未だにシラを切るソイツは随分と不機嫌そうに口元を歪めていた。
「テメェらの事に口出すつもりもねぇが、手遅れにならねぇようにしとけよ。」
「わーっとるわ。」
「わかってねえから言ってんだろ。」
呆れ顔で腕組みをした拳西が椅子へと深くもたれかかる。
視線の先にいる平子は、先程とは違い随分と浮かない表情をしていた。
「・・今度、時間作ってくれへんかって言うてもうてん。」
しゃァけど、と続けた彼が目を伏せる。
「まだ、アカン気ィすんねん。まだ早いんとちゃうかって。」
「・・。」
「Aはまだギンの死を受け入れられてへん。」
物分かりのいいアイツは、受け入れとるフリしとるだけや。と続けた平子はその視線を窓の外へと向けた。
あの決戦から半年が経つ。季節は春も終わりがけ。心の傷が癒えるには早過ぎる。こればかりは時間が解決するしか方法が無いのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 522人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
でんでん。(プロフ) - 毎日楽しみで大好きです！ご無理なさらず続きを楽しみにお待ちしております！(^^) (9月8日 2時) (
レス) @page46 id: f6127465a5 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - いいところで……！！！ (5月17日 1時) (レス) @page46 id: 40e8d62194 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 続きが気になります•••！ (2023年4月26日 20時) (レス) @page46 id: c3f7ca38c1 (このIDを非表示/違反報告)
いちか(プロフ) - 大好きです続き読みたいです (2023年4月22日 22時) (レス) @page46 id: e23563eff4 (このIDを非表示/違反報告)
マチリ - 最新話まで読ませていただきました。素敵な作品に出会えてとても感動しております。ご無理なさらずに続きを楽しみにお待ちしております。 (2023年2月25日 0時) (レス) id: 7c2370384d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おもち | 作成日時：2021年5月9日 2時
