54話 ページ9
渋谷玲夜side
「…お前どうせあの御幸だかっていう男が好きなんだろ?」
「!?!?」
驚いた表情をする俺の許嫁…芝山A。
俺はすぐにわかったこいつがあの2年坊主を好いていることは。あの男がこの女に惚れていることもっと簡単にわかったが…。
昇降口でこの女が先に言ったあと、俺らは二人っきりになってしまった。
あの男……御幸というやつは顔見知りでもない上に年上の俺に超強気で『あんた誰だよ』と言った。生意気な野郎だと思った俺は『あいつは俺の許嫁だけど?』と返した。
その後御幸は硬直したように固まった。その隙に俺はその場を離れ、全くわからない校舎を進んでいった。なんとか教室に着けば囲まれているあの女。その後やって来た御幸に見せ付けるようにキスをしたー…。
逃げるように出ていく女。御幸もそれを追って出ていったが……俺の脳内を支配したのは女の顔だった。
はっきり言って綺麗だった。女には別に困ったことは無かったし、むしろ有り余ってたくらいだ。
…でも、御幸の野郎に向けたあの悲しそうな目はどんな女の目より綺麗だった。
色んな表情を見たくなった。俺の前では基本無表情だった女が御幸と言うやつが現れた瞬間全く知らない顔を見せるようになったのだから。
簡単に言えばあの女に惚れかけているのかもしれない。
…それでも今この女の頭には御幸しかいない。
俺が芝山さん(この女の父親)に言わないかや、御幸の身の安全を危惧しているのだろう。
…もし俺がバラしたとしよう。この女は100%泣くだろう。
俺にキスされたぐらいで泣いて出てったくらいなのだから。
…でも、あの女の泣き顔はあんまり見たくはない。御幸という男を想っている顔が綺麗なのであって泣かしたりしたい訳では無い。
……って、俺は何を真剣に悩んでいんだ。
こんな風に女に興味を示すことなんてあっただろうか。女という存在は暇を潰してくれる存在でそれ以上ではなかった。
それでも俺はこの女だけはそうと思えなかった。
ただただそばにいて欲しい。
例えそれが政略結婚という立場であっても……。
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作者名:時雨 | 作成日時:2019年1月26日 0時