非恋愛対象2 【御幸一也】 (ページ4)

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49話ページ4

御幸side

急に先輩の手に力が入った。

「数ヶ月後、私が産まれた…。産まれたけど、それと引き換えにお母さんは命を落とした……。」

自分の母親がどんな声で、どんな性格の人だったかも知らない、と先輩は悔しそうに話す。

そして話はまだ続いた。

「お母さんの葬儀にお父さんは参加させてもらえなかった。祖母を中心にみんなが口を揃えて『あんたのせいで死んだんだ』と言ったから…。
それからお父さんは男手ひとつで私を育てた。プロ野球選手として活躍もしつつ、私を必死で育ててくれた…。」

昔を振り返るかのように幸せそうな顔をする先輩。…しかし、その顔が一瞬で曇る。

「けど、小学1年の夏、不慮の事故で亡くなったんだ……。」

「……！」

何も言えなかった。幼い頃に両親を無くしたその辛さや寂しさは簡単に言葉で言い表せるものでは無い。

「私は1人になった。もちろん小学生の私に頼れる人なんかいなかった。…それでもなかなか育ててくれる人は見つからなかった。そのせいで施設に預けられそうになった。……でも、渋々お母さんの実家……芝山家が名乗り出てくれた。それから私はあの家に住むようになった。」

……やっと納得がいった。なぜ、先輩が自分の家が金持ちであることを隠していたのか……。

望まれてその家の子になったわけではないから…。

ーーけれどここまではまだ序章に過ぎなかった。

「……あの家に引き取られてから私はなんて呼ばれてたと思う？」

急に問いかけられる。

急な質問とその意図がわからない質問に答えが詰まる。

「…『愛人の娘』って。腹違いの姉にすらあんたのせいでお母さんは死んだとか、あんたが生きていることは誰も望んじゃいない、とか散々な言われようだった。」

笑いながら話すがその顔は無理をしていた。

「先輩、無理に話さくていいです……。辛いなら、そこまでで……」

そう言うと、先輩は首を横に振る。

「…御幸なら話しても大丈夫。」

その『大丈夫』がなんの大丈夫なのかは俺にはさっぱりだったが、そこまで言う先輩の話を途中で止めることは出来なかった。

再度話し始める先輩の話に耳を傾ける。

「……それからも耐えて耐え続けて、気づいたら中三だった。進路を決める時期だったけど、私はやりたいことも将来の夢もなかった。少しでも家にいる時間が少なければそれでいいって。……だから、お父さんの出身校青道を選んだ。」