47話 ページ2
口を拭いながら廊下を走る。注意する先生の声なんて耳に入ってこなかった。
自分がどこへ向かって走っているのかも、 心の整理も出来なかった。
そして、気づいた時には使われていない空き教室にいた。
足に力が入らなくなって、膝から崩れ落ちた。
信じられなかった。あんな人前で、御幸の前でキスをするなんて。好きでもない相手に……。数ヶ月前御幸にキスされたときは嫌じゃなかった。けど、あの男にキスされた瞬間体の先が冷えたように冷たくなった。
何度も何度も口を拭うが消えないあの感触。……気づけば流れる涙。
居場所がバレないように声を押し殺して……。
けれど……
ガラッと教室の扉が開けられる音がした。
「……いた。」
「…み、ゆき」
なぜ御幸は私なんかを追いかけて来たのだろうか、なぜ、私がいる場所がわかったのだろうか。
色んな疑問が頭の中を駆け巡る。……けれどそんなことよりも体が先に動いた。
御幸の方へ引き付けられるかのように寄せられる私の体。…そして、そのまま飛びついてしまった。
「っ、御幸……御幸っ!!」
今まで溜めていたものが全て出るかのように溢れ出た。
このときばかりは、恥ずかしさも何も感じなかった
。ただ、ただ御幸に縋った。
御幸は少し驚いたようだったが、ゆっくりと私を抱きしめてくれた。
久しぶりに感じた御幸の体温。懐かしくて、暖かくて安心した。このまま時間が止まってしまえばいいのにとさえ思った。
泣きじゃくる私を見て御幸は口を開く。
「ねぇ、先輩何があったの……」
……言っていいことなのだろうか。言ってしまって御幸の身になにか起きたら?私はそんなことがあったら耐えられない…。
迷った……でも、、、。少しだけ、ほんの少しだけ御幸に頼ってもいいだろうか……。
「……お願い御幸。助けて……。」
御幸の服をぎゅっとつかみ震える声で言う。
「…当たり前じゃん。」
そう言葉をかけて、御幸は優しく強く私を抱きしめてくれた。
冷えきった感覚だった体が徐々に体温を取り戻す。体だけでなく、心も温まった気がした。
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作者名:時雨 | 作成日時:2019年1月26日 0時