天ノ弱《小説版》 (ページ17)

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天ノ弱16~この両手から零れそうなほど君に渡す愛を誰に譲ろう？~ ページ17

僕は今まで、何をしていたのだろう。

貰うだけ貰った愛。

溜めただけであげない愛。

そんなものばかりで、僕の愛は何一つない。

こんなに沢山の、溢れるほどの愛をどうしようか。

僕は、人に愛をあげたことがない。

その理由は勿論、兄さんと叉好にあげる為。

でも、まだあげられていない。

あげようと思ったことは何度もある。

あげるチャンスは何度もあった。

それなのに僕は、それを何度も逃した。

僕が積極的な人間だったら、どんなに良かっただろう。

簡単に、いつでもいくらでもあげられただろう。

だから、僕は考えた。

今日こそは。

今日こそは言った方が良い。

言わなくちゃダメなんだ。

そして、あげなければ。

こんなに沢山の愛なんて、僕には必要ない。

僕には、一つずつの愛でいいんだ。

そして、兄さんや叉好には…

この、両手から零れんばかりの愛。

でも、どうしよう。

どうやってあげよう。

「いっそのこと、他の人にあげてしまおうか。」

空を見上げながら、そんなことを呟いた。