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私が作る ページ20
一瞬止まった無月だったが「いいのかい？」と治に聞き返す。治は小さく頷く。
「ここに来て結構経つけど、未だ無月さんの手料理食べたことがないな、って気がついたんだ」
「そうだったっけ？まあ、作ってもいいけどー、どんな料理になっても怒らないでね」
「無月さん。作るのはあくまで咖喱だ」
「わかってるってー」
無月は気の抜けた返事と共に台所へと消えていく。今更乍に心配になってきた治だった。
結果として無月の作る料理は味の素の味しかしなかった。見た目は咖喱なのだが、味は味の素。全く理解不能である。
本人に聞けば咖喱の中に味の素を四袋程入れたらしい。味の素は森羅万象だとも云っていた。
「もう、無月さんに料理を作らせないから」
「んー、治が私に作らせなくとも、もう作ることはないと思うよ」
「これが最初で最後だ」そう笑って云う無月を見て治は何か違和感を感じた。
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