お弁当と愛情を… (ページ29)

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第28話ページ29

次の日

私は休み時間、先輩をイメージしたワンピースのイラストを書いていた

何を書くかは決まったものの今度はデザインで詰まってしまう

「リボンとパール……付けすぎかな？いや……」

「な〜に書いてるの♪」

「うわぁっ！」

誰！？

急いで振り返るとそこには凛月くんの姿があった

「うぅ、酷いよA……親の顔みて「うわぁっ！」なんて……！」

「ご、ごめんなさい！！」

「Aー？どうしたんだ？」

「出たーーー！！」

「反抗期の娘を持つ父親の気持ちが痛いほどわかるわ」

「「うわぁっ！」って言われただけで嘘泣きしてごめんなさいでした」

「親をお化け扱いしてごめんなさい」

「今、泣いてる」

こんな静かに涙流す人初めて見た

「で、何書いてたの？ワンピース？」

「あ、うん！半年後に雑誌撮影があるんだけどその時に着る服を1つ持参することになったの」

「なんかリボンとかレースとかパールとか飾り多くない？」

「やっぱりそうだよね……」

今までの衣装はフリフリしたものが多かった

私は仮にもアイドルだし、アイドルらしい衣装しか作ったことなかった

だから自分のブランドを作ることになった時は普段使いできる服を作れず結局お断りすることになった

その時は相当へこんだなぁ

服は自分の「個」を表す鎧

そう思っていた

だから自分が変わり映えしない人間であることを突きつけられた気がしてならなかった

鎧を壊され、剣を持つこともできない役たたずな騎士になったみたいで…

何も生み出せない自分の手をどれほど憎んだか

そういえば自分の腕を傷つけたこともあった

腕が「痛い」という感覚を覚えた頃には私の腕は血で染まっていた

一時は気持ちが楽になる

けれどポタポタと垂れていく血を見ると自分の才能がこぼれ落ちていく感覚がして涙がこぼれる

結局は悪循環

何をしても自分に重ねてしまう

「A！…大丈夫か？」

「……！…平気だよ…」

「…Aが嫌なら無理に聞かない。でもこれだけは覚えてて。俺達はAのこと大事に思ってるから…だからAも自分を大事にして」

「…ありがとう、でもホントに大丈夫だから！」

今のは強がりでもなんでもない

私はもう泣いて憎んでばかりの私じゃないから

だから皆からの愛情も受け取れる

ありがとう皆