華麗な踊り子は裏の世界では有名です【ジャーファル】

15：血 ページ15

「シンドリアも平和じゃなくなるな」

「続いたらどうしましょう」

「怖いわね」

「夜は極力出歩かない方がいいぜ」

「とか言ってるけど、案外アンタが犯人じゃないのかい？」

「ば、バカ言うなよ！」




「コーヒーが不味くなるな」




翌日のSAiNAは、賑わっていた

繁盛というわけではなく、ただ昨夜の事件について話したい人がほとんどで


縁起の悪い話が店を包み込み、店長はうんざりしながら珈琲豆を挽いている


ここのところ通いつめてくれていたジャーファルさんも今日は来ない



「そうですね」

「ん、Aちゃん」


常連さんがカウンター越しに話しかけてきた



「はい？」

「怪我でもしたのかい？」

「いえ……してませんけど……どうしてですか？」

「いや、首から血が」




そう言われて慌てて自分の首を触る

髪に隠れた耳付近にジャリっという、気持ち悪い音がして、赤黒い何かが剥がれ出す



もしかしなくても....



これは昨日の男の返り血だということが分かった



シンドリアは一家に一つお風呂がないため、みな、近くの泉で体を洗う

その泉は時間が管理されていて自由に水浴びすることができない


だから男を殺った後、タオルで拭いたがどうやら拭き忘れたらしかった



「あ、そう言えばちょっと掻きすぎて」

「あるよね、そう言う事！俺もついつい掻きむしっちまうんだよ」




常連さんは笑う


気づかれてはいないようだ




そう言えば....




ジャーファルさんは、気づいたのだろうか＿＿＿？

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