語り/潮江文次郎 ページ42
最近、不知火と話す機会が少なくなったように感じる。それはきっと、不知火が他の忍たまたちと関わる機会が増えたからだろう。
委員会の時に左門が言っていた。
不知火は優しくていいやつだと。
不知火のおかげで、学園全体がいい方向へと変わり始めているのは確かだ。やはりあの時、不知火を忍術学園に連れてきて正解だった。
最初はどうなることやらと心配していたが、周りと上手くいっているようで安心した。
忍たまたちと話している時の不知火はよく笑う。
ここに来た頃の不知火は、辛そうな顔ばかりしていた。俺はそんな不知火を見るのは心苦しかったし、笑うことが増えて本当に良かったと思う。
不知火が忍術学園にやって来てから、今日で八日目。俺は最近、不知火を見ているとモヤモヤすることが増えた。
何故かは分からないが、俺は随分昔から不知火のことを知っているような気がするのだ。
“文次郎、また遅くまで鍛錬してたの?”
“ちゃんと寝ないと体がもたないわよ”
“やっぱり何回やっても慣れないな・・・”
“人の血なんてもう見たくないよ・・・”
“ねぇ、文次郎”
“私、もう卒業しようと思うの”
不知火に似た女。
その女はこの世界に存在していたはずなんだ。俺たちと一緒に忍術学園で共に学び、立派な忍者になろうと誓い合ったはずなんだ。なのにその女についての記憶がまるでない。
不知火が忍術学園にやって来てからは、徐々にその女について思い出せてきている。やはり不知火とその女は何か関係があるのだろうか?
星空を眺め、一人考える。
しかし答えは出ない。
そんな時、不意に人の気配がした。
俺は勢いよく後ろを振り返った。
するとそこにいたのは不知火だった。
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作者名:ずみ | 作成日時:2019年11月2日 17時