冒険の傷痕:6 ページ8
お兄ちゃん。
わたしだよ。Aだよ。
お兄ちゃん、
どうしてそんなにとおくにいるの?
どうしてふりむいてくれないの?
ねえ、
『──A』
お兄ちゃん、
『駄目だA、俺に近付くな!』
なんで?
『逃げろ、早く』
やだ、
『頼むから──』
おねがいだから、
『俺がお前を殺す前に──ッッ』
振り返ったその顔は、
見知った優しい顔ではなく、
それはそれは綺麗な紅に染まっていて、
それでも恐ろしい化け物で、
細い腕に真っ赤な剣を掴んで、
それを私に目掛けて──
「──っっ!!」
勢いよく目を開き、数秒硬直したあとにあれは夢だと理解する。
心臓の音が気持ち悪いくらいに全身に響いている。
瞼の裏の紅が取れない。吐き気がして、頭が痛くなって、思わず身体を抱きすくめた。
息が上手く吸えない。息が上手く吐けない。
軽い過呼吸におそわれて咳が出る。まるで叫んだ後のように喉が痛い。胸を掴んで必死に呼吸を整えようとする。息が空回りをして、ヒュー、ヒュー、と風が抜ける音がする。
うずくまりながら喘ぎ、ふと自分は真っ白なベッドの上に寝転がっていたことに気が付く。
きしむ身体を無理やり起こして周りを確認する。ここは…教会か。
…誰かがここまで運んでくれたのか。
その"誰か"はきっと、私を助けてくれたあの人達だろうか。せめてお礼でも、とベッドから抜け出そうとすると、部屋のドアが開いた。
「…起きたか」
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千織(プロフ) - チロル/CHIROLさん» チロルさん、初めまして!有難いコメント、とても嬉しいです…!これからも精進していくので、見守って頂けたらと思います! (2018年11月3日 7時) (レス) id: 43a89afe6e (このIDを非表示/違反報告)
チロル/CHIROL - はじめまして!ドラクエファンなので、ドラクエの夢小説を書く人がいるのか!と驚き拝見させていただきました!掴みにくい世界感を表現されていて千織さんはすごいと思いました!これからもがんばってください! (2018年11月2日 22時) (レス) id: f7aec74604 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千織 | 作成日時:2018年10月29日 20時