冒険の痕跡:5 ページ7
その姿を見た時は酷く驚いた。
小さな少女が、自分より遥かに重いであろう鉄の斧を、魔物に囲まれてボロボロになりながら、泣きそうになるのを堪えるようにして振り回していたのだ。
その足取りはおぼつかなく、今にも倒れそうになりながら闘っているのを見て、居てもたっても居られずに飛び出していた。
「…助けるぞイレブン」
「分かった」
イレブンが先に〔メラ〕を放ち、弱ったところをブーメランで一掃する。一匹一匹の魔物は弱いが、この数だとそりゃ苦戦もするか。こんなに小さな子供なら尚更だ。
ごと、と握りしめていた斧を手から滑り落とし、呆気に取られている少女に駆け寄る。
すぐにイレブンが回復魔法をかけ傷を治すも、余程疲れていたのかふらりとよろけてその場に倒れてしまう。
そのまま目を瞑り、気を失った少女を背負う。
「…さっきの教会、行くか」
「そうだね」
イレブンが頷いたのを見て、オレ達は数時間前まで世話になっていた教会へ戻ることにした。
「──まあ、先程の旅人さん達。忘れ物ですか……あら、そちらの方は」
「シスター、この子を休ませてやってくれないかな」
ボロボロになった少女を見て、シスターは目を見張る。
「勿論ですとも。どうぞ、この部屋をお使いなさいな」
「ありがとう、シスター」
そう言って礼をした後、与えられた部屋のドアを開ける。背負っていた少女をベッドに寝かせようとした時、
ぎゅ、と少女の手がオレの肩を掴んだ気がした。
「…………お兄、ちゃん」
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千織(プロフ) - チロル/CHIROLさん» チロルさん、初めまして!有難いコメント、とても嬉しいです…!これからも精進していくので、見守って頂けたらと思います! (2018年11月3日 7時) (レス) id: 43a89afe6e (このIDを非表示/違反報告)
チロル/CHIROL - はじめまして!ドラクエファンなので、ドラクエの夢小説を書く人がいるのか!と驚き拝見させていただきました!掴みにくい世界感を表現されていて千織さんはすごいと思いました!これからもがんばってください! (2018年11月2日 22時) (レス) id: f7aec74604 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千織 | 作成日時:2018年10月29日 20時