冒険の傷痕:4 ページ6
…あぁ、やってしまった。
それは、城下町を抜けて少ししたところ。昔からの方向音痴が発動されてしまったのか、または別のセンサーにでも引っかかったのか、魔物に不意をつかれてしまった。
そこまではいい。問題はこの魔物の量だ。重い武器のせいで連続で放たれる攻撃を避けきれない。一つ一つのダメージは少なくとも、私の体力を確実に削ってくる。
じわりと生暖かい感覚が腕を伝う。逃げようにも退路を絶たれて逃げきれない。
くらりと倒れそうになるのをどうにか耐えながら魔物を倒していくも、数が減らない。一人ではどうにも捌ききれない。
「…くっそ、」
減らされた体力を回復させようと斜め掛けのカバンをまさぐるも、
「…ない」
やくそうが、ついに切れてしまった。こんなことになるならもう少しばかり集めておけば良かった、と思ってももう後の祭り。
…おいおい冗談はやめてくれよ。こんな、こんなところで死ぬなど。まだ勇者にも会ってないっていうのに、
「──〔メラ〕っ!」
私のものではない声が響き、あっという間に周りは炎に包まれる。息を飲む間もなく、呆気に取られている私の眼前を、ブーメランが飛んで魔物を一掃する。
ブーメランの軌跡を辿って見えた、茶髪の少年と青髪の青年が私を助けてくれたのだと理解した。
「──おい、大丈夫か嬢ちゃん。…イレブン、ホイミしてやれるか」
「うん。…〔ホイミ〕」
少年がかけた回復魔法で自分の体力が元に戻っていくのが分かる。だがそれとはまるで正反対に、身体に力が入らずその場に倒れ込む。
…なんだこれ、頭が痛い。頭だけじゃない、身体のあちこちが痛い。くらくらする。
「おい、おいしっかりしろ嬢ちゃん」
青年の呼びかけも虚しく、異常なまでに重くなった瞼に逆らえず目を閉じてしまい、私の意識はぷつりと途切れてしまった。
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千織(プロフ) - チロル/CHIROLさん» チロルさん、初めまして!有難いコメント、とても嬉しいです…!これからも精進していくので、見守って頂けたらと思います! (2018年11月3日 7時) (レス) id: 43a89afe6e (このIDを非表示/違反報告)
チロル/CHIROL - はじめまして!ドラクエファンなので、ドラクエの夢小説を書く人がいるのか!と驚き拝見させていただきました!掴みにくい世界感を表現されていて千織さんはすごいと思いました!これからもがんばってください! (2018年11月2日 22時) (レス) id: f7aec74604 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千織 | 作成日時:2018年10月29日 20時