第八話 傍観者 ページ32
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『いえ、そのようなことは1度もありません。』
そう強く言い切った北里准尉の足が一瞬だけ、落ち着きなく揺れたのを俺は見逃さなかった
鶴見中尉と目を合わせる
これはクロであると
准尉の死角にいる俺は、首を1度だけ横に振った
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「月島、北里准尉の様子を見てなにか変わったところはあったか？」
北里准尉が東京の実家から数週間ぶりに帰ってきた日のことを思い出した
その日は雪が降っていて、いつもより格段に冷え込んだ
准尉の白い肌が寒さで赤くなっていたな、と思い返す
まあでも、中尉が聞きたいのはそんなことではないだろう
「いえ、特には」
「月島ぁ〜おまえは鈍いな〜」
中尉が机に肘を着く
呆れたと言わんばかりの溜息に少しカチンとくる
じゃあなんだと言うんだ
口を開きかけた時、
「あれは入れ替わってる」
中尉はそう言った
「は？」
言葉の意味がわからず、思わず聞き返してしまった
じろり、とこちらを見て中尉は続ける
「しばらく奴を監視しろ」
報告はマメにな。
その日の会話はそれで終わりだった気がする
何故ですか？そんな疑問は今更沸かず
造反でも疑っているのだろう、それぐらいにしか思わなかった
言われた通りに遠巻きに准尉を監視してはその日のうちに様子を報告した
北里寧一郎という人物は
清廉潔白
泥中之蓮
そんな言葉が浮かぶ、清らかな聖人のような御人だ
生まれ育ちが良いのだろう
彼の所作からは品が溢れ、鈴を転がすように笑う
加えてその精巧な造りの面は、1度見れば忘れられない美しさがあり
血生臭くてむさ苦しい、男だらけのこの環境にいると余計に目を引く存在であった
まさに華のようで
時折同じ男だと忘れてしまう瞬間もあった
密かに想いを寄せる者も多いであろう
北里が声を荒らげるところなど見たことがなく、静かに笑っている姿ばかり見かける
誰でもその優しさに触れたくなってしまうのだ
そんな男が、なにを企むというのか
まったく意味のわかっていなかった俺は
さすがに疑り深すぎるのでは？と最初は鶴見中尉を少々悲観した
しかし監視を続けているうちに、あることに気がついた。
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芝(プロフ) - 鮭マヨさん» コメントありがとうございます。とても励みになります…(;_;)これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年9月13日 1時) (
レス) id: ac408ee6ee (このIDを非表示/違反報告)
鮭マヨ - この作品ほど更新が終わってほしく無いと思ったの初めてです…更新めっちゃ楽しみにしてます…！ (2021年9月11日 8時) (レス) id: 9536630108 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芝 | 作成日時：2021年8月31日 2時
