・「いつも手当てしてくれてありがとね」
「ちゃんとチタタプって言うんだぞ〜」
「覚えとけ、お前は俺を裏切れねぇ」
「私は君の能力を高く買っているんだ」
激しい金塊争奪戦の、和やかなはずの隙間話。
〈ラインナップ〉
・杉元佐一
「不死身の体」
・アシリパ
「一時の平和」
・白石由竹
「吊り橋効果」
・尾形百之助
「衣、食、尾形」
・鯉登音之進
「我儘ボンボン」
・月島基
「一粒の愛」
・鶴見篤四郎
「不完全なアナタ」
7種類の結果パターン
シライシ！鼻からクリオネ出てるぞ‼ - 2024年5月15日
鶴見篤四郎〈不完全なアナタ〉
「すごいじゃないか鯉登少尉」
「月島、あとは頼んだぞ」
「私は君の能力を高く買っているんだ」
私は鶴見中尉が嫌いだ。
鼓膜に蜜のように甘く響く都合のいい言葉の数々、妙な色気を孕んだ声音や立ち姿。
そして心理的要因を元に次々と人を手玉にとっていく頭脳に人を率いるカリスマ性。
どこをとっても完璧で弱みなんか見せない、完全なところが大嫌いだ。
「YOU君、後は任せたよ」
夜の静けさが嫌に耳に残る第七師団の建物内、一室にある椅子に堂々と鎮座する中尉に声をかけられた。言わずもがな仕事の話だ。
私は彼が率いる小隊の雑務係、よって上司と部下と言う平凡な関係。
一目置かれていたり特別視されるなんて夢のまた夢の普通の間柄。
「はい」と了承の返事をすると彼は張り付けた笑みと気色悪いほど優しい声で言った。
「もう夜も遅い、出歩くときは気を付けるんだぞ」
『ご忠告ありがとうございます』
ペコリと腰を折りお手本通りの礼をして私は鶴見中尉のいる部屋から出た。
数歩進み足音を偽造してから一切の物音を立てないように注意を払い再び部屋の前まで戻る。
扉の隙間からこっそりと中尉を覗き込む。
絵面だけ見ると第七師団を探るために送り込まれたスパイに私は見えるだろう。
しかし違う、私がここに戸惑ったのは聞き耳をたてるためでも中尉の秘密を探るためでもない。
「…………」
『(出した)』
昔、忘れ物をとりに暗い廊下を歩いていると漏れた光に導かれるように部屋を覗き見たことがあった。
それからだ、私にこんな癖が出来たのは。
それからだ、彼に対し深い感情を抱くことになったのは。
彼がおもむろに取り出したのは誰かのであろう小指の骨。
愛する者のものなのか、憎むでいた相手のものなのかは不明だ。
だが私が初めて彼が小指の骨を手で癖のように触っている光景を見た瞬間、涌き出た感情は拒絶でも恐怖でもない。
今までに感じたこともない愛に似た感情だった。
無心に何かを懐かしむように目を伏せる彼は人を操る天才鶴見中尉ではない。
昔の出来事を思い出し干渉に浸っているただの人間、鶴見篤四郎なのだ。
『はう…』
普段とのギャップもあってか、私は脆く不安定な彼が愛しくて愛しくて愛しくてたまらない。
心理術も作戦も話術もなく容易く堕ちた私は端から見ればどう映るのか。
私はまた、今日も不完全なアナタを求めていく。
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蛸山葵(プロフ) - 毛玉さん» コメントありがとうございます！当初は明るめの内容にしようと思っていたんですけれど「月島さんにはいご草ちゃんがいるしな…」と悩んだ結果少し切ないような話になってしまいました。作成にあたる中で試行錯誤あったのでそう言っていただき嬉しいです。 (1月19日 23時) (
レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
毛玉(プロフ) - うわ、月島さん…ヤバい好きすぎる！キャラを掴むの上手ですね！羨ましい限りです✨ (1月19日 19時) (レス) id: 7ea1db38aa (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - ユメミさん» 返信のタイムラグがあってすみません…。各キャラの解釈にあまり自信がなかったのでそう言っていただき嬉しいです。コメントありがとうございます！ (11月5日 22時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
ユメミ(プロフ) - 鯉登少尉が鯉登少尉してて好きです！ (10月30日 22時) (レス) id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛸山葵 | 作成日時：2023年8月3日 16時
