ただ一人で死ぬことの辛さなど。 ページ10
数年前。
嗚呼、と感情の無い声が布団と小さな机しかない部屋に響く。
目は生気を失い全身を包帯で巻かれたAが窓の外を眺めながらそう呟かれた言葉は幼い子供の言う言葉では無かった。
『もう満足に動くこともできない。もう二度と鬼を斬ることもない』
「もしかして私を、助けたからぁ‥？昨日、私を鬼から助けたからぁ？」
涙がぽろぽろと落ち可哀相なくらい泣きじゃくる幼き頃のお隣はそう尋ねる。違うよ、とAは言う。
『私の、私のせいなんですよ。背中を刺されてしまって、どうもそこが器官を傷付けてしまったらしい。だから下手に動くと、器官から大量出血して、死ぬ』
＊
『ぁ‥あ"あっ‥う、』
ごぼりと口から血が吐き出される。強い痛みが身体の節々が斬れ折れ崩れていく。嗚呼、時間ですね、とどこか呑気に思えた。自分のことなんてどうだっていい。
お隣さんの首筋は触れると小さくどくどくとし た振動を感じた。まだ、まだ死んでない。だからまだ終われない。まだ死ねないんですよ。
ゆっくりと、ゆっくりと、立ち上がる。それでも微かに動いた衝撃で大量の血が流れ出る。喉も頭ももうどこも痛かった。でもそれも今更であった。痛みなんて慣れている。
やっと立ち上がることができると、自分の、藤の花の匂いを染み込ませていた黒い羽織りをお隣さんに被せる。血の匂いで鬼が寄せられないか心配であった。
一つ息をすう。長く深く吸う。肺が破ける程に空気をいれる。お隣さんはまだ間に合う。でも、まだ間に合うだけで、助かるかどうかなんて分からない。だから死物狂いで。
『おとなり、さん』
そう呟くと同時にAとお隣のいた場所には一つ小さな渦を巻いた風が現れた。そこにもうAはいなかった。
もしも、なんて思ったことがある。もし私があの時刺されていなかったらと。そうしたら鬼殺隊にはいっていたのか。消えもしない罪を消したつもりになりながら。
嗚呼お隣さん。あなたは分かってない。分かってないんですよ。あなたは知らないでしょう。
ただ一人で助けも来ず痛みに耐え泣き叫ぶ声も誰に聞こえることなく、無力に死を待つだけの虚しさなど。知らなくていい。知らなくてよかったんですよ、あなたは。
溢れ出すほどに増えてしまった思い出。→←現実は事実であり、決して自分の理想通りにはいかないものである。
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ひいらぎ・いろ - 小冬さん» ありがとうございます、いつも小説を書く度に面白いか凄い不安になって、、そう言ってもらえて凄く凄く励まされます！これからも頑張ります！ (2021年5月2日 7時) (
レス) id: 3d1bfbcbe7 (このIDを非表示/違反報告)
小冬 - とっっても、面白かったです！！もう、夢主の反応とかがめっちゃ面白くていつも思い出して笑っています！！これからも頑張って下さい！！ (2021年5月1日 23時) (レス) id: b394ae1541 (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - S_t0606さん» コメントがきたことにはしゃぐ人間はこの世にはいます。（ありがとうございます！）なるほど、、確かに夢主よく宇髄さんといますから、、もしかしたら、、？ (2020年11月29日 20時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
S_t0606(プロフ) - 宇髄さん宇髄さん宇髄天元様で落ちお願いします (2020年11月29日 17時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - 氷華さん» まさか続編にいけるとは、、（←亀更新人間）こちらこそ、よろしくお願いします！ (2020年11月14日 21時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひいらぎ・いろ x他1人 | 作成日時：2020年11月13日 0時
