現実なんてそんなもん。 ページ8
日が暮れる。
Aちゃんがいない。いないの、どこにも。見つかるまで何日かかっても探すと思っていた。でもそれでも見つからなかったら。あれでお別れだったなら。
足が止まる。背中が朱色の夕日に染まる。お隣の顔は見る見る血の気を無くし青ざめていく。
考えたくないことなのに、それなのに頭の中によぎる。
私は。一体何の為にいるのだろう。
いつだって助けてもらってばかりだったわ。Aちゃん、凄いの。本当に凄いの。"体力もそんなに使えない"はずなのに、いつも私のことを助けてくれるの。いつだって、いつだって。
でもそれは、私は助けられてるってことで。私がAちゃんを助けられたことなんてなかった。一度だって。
あの時だってーーー
ワオオオオオオオオオオオオオ
背筋が凍る。背後から狼のような遠吠えがする。こんなところに狼なんて、いない。いないはずなの。じゃあ、後ろにいるのは。
お隣はゴクリと唾をのんで後ろを振り向く。向くと、そこには赤黒い目がお隣を睨みつける。狼じゃない。狼のような人間の姿をした鬼だ。
「ひっ……!!」
後ろに下がろうとして何かに引っかかって、よろける。よろけて、膝をついてしまう。その隙にも鬼は唸りをあげてお隣に振りかかる。
頭の中で嫌な想像がどっと押し寄せられる。
「い、やだっ!!!」
ぐっ、と唇を噛んで涙をあげて叫ぶ。鬼に言葉が通じないのは分かってる。それでも。
死にたくない。まだ死ねない。まだ何もできていない。まだ何一つAちゃんにありがとうと言われることをしていない。
それなのに、視界が弾けてーー。
手首に強い衝撃がきて、鋭い痛みが身体中に走った。
「あ、っ、ぅ'ぁ……」
ぼんやりとした視界の端に赤い血がたらりと流れていた。怖いのにもうどうしようもない気持ちに襲われてしゃっくりをあげるように涙が流れる。
*
いつだってこんな時Aちゃんがいた。
私が危ない時にAちゃんは何でもない顔をして拍子抜けたことを言って、私を安心させるの。
自分は傷ついても大したことない素振りで、本当は痛いはずなのに第一に私のことを気遣う。
そんなあなたの横顔を見て、いつか、あなたのことを助けられたらなって思ったのに、そのいつかはもう二度と訪れない。
Aちゃんにもう二度と会えない。都合よく助けなどこない。それが現実である。分かっていてもそれでも酷く寂しかった。
酷く冷たかった。
現実は事実であり、決して自分の理想通りにはいかないものである。→←日暮れが来るまでの時間。
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ひいらぎ・いろ - 小冬さん» ありがとうございます、いつも小説を書く度に面白いか凄い不安になって、、そう言ってもらえて凄く凄く励まされます!これからも頑張ります! (2021年5月2日 7時) (レス) id: 3d1bfbcbe7 (このIDを非表示/違反報告)
小冬 - とっっても、面白かったです!!もう、夢主の反応とかがめっちゃ面白くていつも思い出して笑っています!!これからも頑張って下さい!! (2021年5月1日 23時) (レス) id: b394ae1541 (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - S_t0606さん» コメントがきたことにはしゃぐ人間はこの世にはいます。(ありがとうございます!)なるほど、、確かに夢主よく宇髄さんといますから、、もしかしたら、、? (2020年11月29日 20時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
S_t0606(プロフ) - 宇髄さん宇髄さん宇髄天元様で落ちお願いします (2020年11月29日 17時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - 氷華さん» まさか続編にいけるとは、、(←亀更新人間)こちらこそ、よろしくお願いします! (2020年11月14日 21時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひいらぎ・いろ x他1人 | 作成日時:2020年11月13日 0時