40 sideなし ページ42
振り返ると海賊がすぐそこまで追いかけてくる
父親は人々を守る為
少女を船に残し海賊達の元へ歩を進めようとする
そんな父親を食い止めるように少女は再び泣いた
言葉にならない思いを涙と共に必死に訴える
父親は何も言わずにただ微笑み
少女の頭に手を置いた
そして優しい嘘をついた
"A父さんは皆に秘密である研究をしていてね
それを特別に教えてあげよう
人が何かを得る為には
同じ位何かを失わなければいけないんだ
その"何かは"人や状況によって全く違う
だから全員が幸せになる事は出来ない
だけど父さんはそう思わない
きっと皆幸せになる事が出来る
けどね父さんはその答えを見つけられなかったんだ
だからAがその答えを見つけて
父さんに教えてくれるかい？"
本当はそんな研究何てしていない
ただ自分が死ぬ事が分かっているから
生きて欲しい幸せになって欲しい
そんな気持ちがつかせた小さな嘘と約束
少女は泣くのを堪えながら
何度も何度も頷いた
父親が行くのを分かってしまったから...
そしてそれは自分には止めることは出来ないことも
父親は抱えていた箱を少女に渡した
どうするかは自分で決めていい
ただ持っていてほしいと言って
額にキスをし"愛してる"と抱き寄せた
少女が大事そうに箱を抱えたのを確認し
自分と母親の結婚指輪が通された2つのネックレスを
少女の首にかけそっと抱きしめた
これが父親としての自分が最後にできる事だから
船がゆっくりと進み始めるのとは反対に
海賊達の元へ走り出した父親
少女は目をそらすことなく父親を見ていた
ここで終わったならまだ少女は
幸せだったのかもしれない
船の上を大きな影がいくつも通る
その影の正体は海軍が放った無数の砲弾だった
船に乗る人々は混乱した
無理もない助けに来たと思った海軍が
島ごと消そうとしているのだから
そして少女は誰よりも酷く取り乱していた
この状況で取り乱さない方が難しいが何より
海軍が消し去ろうとしている島には
まだ彼女の父親がいるのだから
砲弾の雨は少女の乗る船にも
容赦なく降り注いだ
至る所で先程よりも大きく火が燃え広がり
ボロボロになった船は
島の近くに落ちた砲弾によって
激しく荒れた海に
飲み込まれるようにして沈んだ
2つ目の死は
海賊と海軍によって奪われた
自分を生かすために消えた
あまりにも残酷すぎる死だった
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くちばし(プロフ) - 鈴さん» ありがとうございます！これからも読んで頂けると嬉しいです (2017年4月2日 17時) (
レス) id: 30fd41f576 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - とても良かったです。更新頑張ってください。 (2017年2月11日 15時) (レス) id: a4159b1efe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くちばし | 作成日時：2016年12月1日 20時
