恋愛争奪戦 . 【羽風薫】 (ページ1)

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第一話_嘘は恋の始まりページ1

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「あれ？Aちゃんじゃん。やっほ〜」

片手を上げてスマートに話しかける。Aちゃんは重そうなダンボールを抱えて、苦笑を漏らす。ダンボールには『本』と書いてあるから、多分Aちゃんの委員会───図書委員の仕事だろうということは一目見たときから気づいていた。

「随分重そうな荷物持ってるね。何に使うの？俺も行っていい？」

「図書室の整理。暇なら来てもらって構わないけど、『UNDEAD』のレッスンは？サボって零に叱られても知らないよ」

「そこら辺は許してもらえると思うけど……。『UNDEAD』ってそんな集団で活動ってわけでもないし。それに───好きな子のお手伝いってなんかテンション上がるしね〜♪」

「ほんと？」

『好き』って言うと彼女はいつも本当かどうか聞いてくる。もちろん本当のこと。嘘じゃない。でも、ここで嘘つかないとAちゃんから好きだって言われないまま終わるんじゃないか、そう解釈し、言葉を全て飲み込む。

「ごめんごめん、嘘。でもここで見過ごすのもなんかモヤモヤするし、手伝うよ。図書室でしょ？」

軽い口調でそう言い、Aちゃんの持っていたダンボールを自分の腕で抱える。

「Aちゃん？」

「え？あ、うん。……ありがとう」

「どういたしまして」

傷ついてるような儚い顔付きに少し桃色に染まった頬。俺は、そんな彼女に目を細めて笑った。