唐突な帰還の報せ。 ページ3
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side◇No.
『時雨Aが、
―――その一報に、ESビルは瞬く間に騒がしくなった。
きっかけは、Switchが主催した【盂蘭盆会】。
リストラにあいアイドルとしての夢を絶たれかけている者たちへの、
最後のチャンスの場。
宴もたけなわ、終盤に差し掛かった頃。
予定に組み込まれていなかったアイドルのライブが始まったのだ。
他所で暴れる蜂の一人のように、芸名で名を伏せていたアイドル。
事実確認のため、メッセージアプリを呼び寄せた赤の魔法使い。
過去に届いていた通知の確認の最中。
会話をしなくなって2年にも及ぶ、ある人から突然メッセージが送られていたのだ。
―――――――
A夏目、ひさしぶり
Aありがとう。
Aもうすぐ、雨が降るよ
――――――――
それは、かつての同士で敬愛する人物。
知られざる6人目。
赤の魔法使い――もとい逆先夏目は、
リストラ寸前のものにしては壮大に始まった舞台に目をやる。
暗転した舞台の向こう、闇の中に薄っすらと見える舞台上に―――“彼”は居た。
“彼”の存在が明るく照らされた、その刹那に。
その人物が“彼”だと。
そう認識した途端、その日一番の揺れるような悲鳴、歓声が湧き上った。
よく見れば、驚きか歓喜か涙を流す人もいる。
「Aにいさん……!?一体どうしテ、戻ってくるなんて兆候ハ――!?」
2年半も行方不明で、その間にアイドル業界はかなり変化したというのに。
舞台に出ただけでその場のすべてを掻っ攫ってしまうのは、
さすが奇人に数えられた人と思うべきか。
「……ししょ〜。この人がライブを始めてから、なんだか天井の方で“雨の色”が見えるな〜…?
偶然でしょうか?」
“彼”の存在を、6人目で有ることを知らない愛弟子が問うた。
「偶然じゃないヨ、ソラ。……多分きっト、その雨は振り始めてしまったラ…
もう“止まない”だろうネ」
意味深な言い回しに首を傾げる様子など目に入らず、
夏目はただ食い入るように舞台の方を見つめている。
そして、再びメッセージアプリを呼び出して…そのまま、伝えるべき人たちに起きていることを伝えた。
――――――
Natsume.SAにいさんが、帰ってきた
(先程の通話画面)
――――――
―――予報外れの雷雨が、宣戦布告をするように降り出した。
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作者名:りいう。 | 作成日時:2023年10月4日 18時