【あんスタ】綺麗な人 2【男主】 (ページ46)

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妹はよく言っていた。「歌と躍りで人を笑顔にするアイドルが大好き」だと。そして、聖もアイドルになるべきだと言っていた。
「お兄ちゃんは世界一綺麗だから、世界一のアイドルになれる。世界一人を笑顔にできる」そう言っては自分の好きなアイドルの歌や踊りを聖に覚えさせた。

妹の強い願いと英智達との縁もあり、天祥院家のサポートで聖は夢ノ咲学院アイドル科に入学できた。普通に考えたら、職もなく酒に溺れている父が入学させられるわけが無い。

聖はアイドル活動に専念した。父からつけられた傷をメイクで隠した。時には英智の財力で最新医療を受けた。
今現在、ひとつの傷も残っていないのは英智のおかげだろう。英智には感謝してもしきれない。

聖の参加するドリフェスに、妹は絶対来てくれた。学校をズル休みしてまで応援に駆けつけ、キラキラとした笑顔でペンライトを振っていた。「私がお兄ちゃんのファン1号だから」とことある事に言っていた。
妹が応援してくれるだけで、笑顔でいてくれるだけで聖は幸せだった。父からの暴力なんて気にもとまらないくらい、、、幸せだった。

そしてまた時は経ち、妹も夢ノ咲学院に入学した。そして妹が高校に上がったと同時に、父の狂気もエスカレートした。
聖は知らなかったがどうやらクスリに手を出したらしい。どうにか隠しきれていた傷は隠しきれないものになり、何度か教師に呼び出されることもあった。
大怪我を負う兄を心配した妹が「児童相談所に言おう」と何度も言ってきたが、あれでも唯一の父親なんだ、、、というくだらない情で全て断った。暴力を受けるのは自分だけだから、、、自分が我慢すればいいのだと妹に言い聞かせていた。
今思えばあれは妹からのSOSだったのだ。あの時、素直に助けを求めていれば妹は死ななかったのかもしれない。

そして去年の10月。なんの前触れも無く妹は死んだ。休みの日、アイドル科の屋上で命を絶った。
遺書には父親が聖にやってきたこと、クスリをやっていたこと、、、クスリ代のために聖の知らないところで妹に身を売らせていたことが書かれていた。

後日、妹の亡骸の中にもうひとつの命があることを知らされた。きっとそれでどうすればいいかわからなくなり、こんなことをしたのだろう。「友達と遊びに行く」と言っていたあれは、、、嘘だったようだ。

父親が逮捕された時も、妹の死を知らされた時も、、、聖が泣くことは無かった。