【あんスタ】綺麗な人 2【男主】 (ページ45)

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話は、随分前に遡る。聖の父と母はイタリアの教会で出会い、惹かれあって結婚した。
そして聖と、妹の愛成が生まれた。

綺麗で優しい母、綺麗で優しい父、可愛い妹に囲まれて聖は幸せ者だった。自身も容姿や頭脳に恵まれ、周りからちやほやされて、、、誰もが羨む人生を手に入れていた。
7歳になって日本に来てもそれは変わらないと思っていた。持ち前の人懐っこさで友達が増え、自慢の家族と暮らして、、、こんな幸せがいつまでも続くと、馬鹿で愚かな子供は信じて疑っていなかった。

幸せの崩壊は本当に一瞬のうちに起こる。それは中学に上がる少し前に起こった。
その日は英智の屋敷で敬人と英智と聖で遊んでいた。いつもは5時になると迎えに来る母が、その日は5時になっても迎えにこなかった。
かわりに、血相を変えた天祥院家の使用人が聖達の元へ来た。、、、母の死の知らせを持って。

悲しかった。聖は優しい母が大好きだった。将来は母のような女性と結婚したいと胸を張って人に言えるくらい、、、大好きだった。胸が張り裂けるような思いだった。

そうして母の葬式が行われた。
その時の聖は悲しみよりも、隣で泣き崩れる妹を見て「僕が守らないと」と強く思った。聖はこの時、妹を守るために強くなることを決意した。

しかし更に悲劇は加速する。母を失った悲しみで、父は壊れてしまった。
務めていた教会をやめ、酒に溺れ、聖に暴力を振るうようになったのだ。妹にも手を出されそうになったが、全て聖が庇った。

『お兄ちゃんが迎えに来るまで、部屋に居るんだよ？音楽を聴いていて。絶対に外の音を聞いちゃだめ』

これが聖の口癖だった。可愛い妹に呻き声なんて、父親の怒号なんて聞かせたくなかった。
この頃から聖は泣かなくなった。妹を守るため、強くあらなければならないと思っていたからだ。

殴られようが、蹴られようが、タバコの火を押し付けられようが、爪を剥がれようが、、、聖が泣くことは無かった。笑顔を繕うことも造作もなくなった。全て、、、妹を守るために。妹に笑って生きてもらうために。

聖の頑張りの甲斐あってか妹はよく笑う子に育った。友達もでき、恋もして、、、アイドルが好きなようだ。そしていくつになっても、背丈の差が縮んできても、、、兄が好きないい子に育ってくれた。