似合わない ページ30
｢……あら、｣
｢……なんですか｣
11時〜14時 防衛任務
14時30分〜 隊長会議
15時30分〜 上層部会議
17時〜 合同訓練
現在19時。報告書制作中
｢……いいえ。てっきりAちゃんも一緒かと｣
オペレーターのその一言に一日中動かし続けていた頭が糖分を欲しがるかの様に停止していく。
今日はどのくらいあいつと時間を共にしたのだろうか
防衛任務でさえずっと一緒だった訳ではないし
その後の会議は当然いないし
合同訓練も銃手のみだった
多忙な1日だったとは言え、まさかこんなに傍に居る時間が短いとは
｢…その表情だと糖分よりAちゃんが欲しいようね｣
｢っ……別に｣
心を見透かされた発言に返す言葉が見当たらず口篭る
だいたい今日のスケジュールはあいつも把握してるはずだ。なのに俺を放置してどこかでのおのおと。
俺は悪くない。
俺を放置しているAが悪い。
｢重症ね｣
｢うるさい。そう言うあんたこそ、その手に持っている笹はなんだ｣
｢これ？本部長から頂いたの。広報の七夕企画で使用した笹が1部余ったので良かったらって。貴方は忙しくて忘れているようだけど今日は7月7日よ｣
そう言われてスマホの画面を見れば確かに今日は7月7日
俗に言う七夕。
織姫と彦星が1年に1度会うことが出来るとかなんとか。
＿＿＿＿だからなんだ？
｢……風情の欠片もないわね｣
｢願いを短冊に書いて笹に吊るすなんて馬鹿げてる｣
｢とても貴方らしい意見。……でもごめんなさいね。今風情を分かち合えない人と話している暇はないの｣
｢何を言って、っておい！！！何を！？｣
刹那腕を引っ張られ、開け放たれた空間に放り込まれる。
｢……おい｣
｢んふふ、ごめんなさい。少し大人しくしていて｣
低い声を出せば、外側で愉快そうに笑う蓮さん
……なぜ俺がオペレータールームに閉じ込められなければならない
｢ﾁｯ｣
溢れそうな怒りに舌打ちとため息を漏らした瞬間
『お疲れ様で〜す』
壁で隔たれていても分かるほど愛おしい声に
身体と脳が大きく反応した
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作者名：八月蝶 | 作成日時：2023年3月16日 16時
