女王の朔望月 (ページ46)

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挨拶だけ残し零の本拠地を後にした。

お昼休みの終了が近づいているとはいえ、この時間帯はどこも人通りが多い。

下手に誰かと出くわしたくないけどここで夏目が作った通路を使えばここにいることがバレてしまう

……けど

『(生徒会の人間に知られるよりマシかしら、)』

天才によって作られたものはどれだけ権力があっても統治しきれない。

それが“皇帝”と呼ばれた彼の不在時なら尚更。

それに朝の段階で1番危惧していた人物に鉢合わせている。

ここまで来たら夏目の耳に情報が入るのも時間の問題か

そう結論付けて記憶の片隅に残っていた彼の学園図を頭に浮かべ最も安全であろう帰路を頭に浮かべた時、

『……ぇ』

それを先読みしていたかのように壁に寄りかかり、こちらを見据える瞳を捉えた。

「……待ってた」

＿＿＿＿果たして私は彼から離れられるのだろうか

『り、つ』

「……大丈夫？顔色悪いけど」

…どうしてあなたがここにいるの？
少し前に明日の約束をして別れたはずなのに。

色々問い正したい。
けれど頬を包み込んだ貴方の手が優しく心地よくてまた甘えてしまう

「兄者に何かされた？」

『ううん、平気』

頬に触れる手を上から重ね、先程の動揺を落ち着かせる

凛月の少し低めな体温が今は心地よくて仕方ない

『……少し疲れたから今日は帰ろうと思って』

「送るよ」

『……それはだめ』

待ってました、とでも言うような即答ぶりに慌てて首を横に振と少し不貞腐れたように顔を顰める凛月。

……違うの。
貴方と一緒に帰りたくないわけじゃない。

問題なのは今の時間帯。

これからもっと日が上り、1日の最高気温になるような時間帯に凛月を外に出して歩かせるなんてそんな事出来るわけない。

それに下手したらまた倒れてしまうから＿＿＿＿

「だから俺の身体はどうだっていいの」

『……だめ。もっと自分のこと大切にして』

貴方の身体は1つしかないんだから。
そう言い切ると彼は怒るでも反発するでもなく、ただ微笑んで私の身体を包み込んだ

「……俺も同じ気持ち」

『え』

「Aには自分の事もっと大切にしてもらいたい」

数秒の抱擁の末に顔を見上げると慈しむような真っ赤な瞳が私を見つめていた

＿＿＿＿その瞬間

スルッと解かれる身体と
握られる手

「ほら一緒に帰ろう」

その所作に魅入られたせいか

気づいたら貴方に誘われていた