女王の朔望月 (ページ45)

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私の発言によって妙に静かになった軽音部の部室

未だにくっついたままのスバルをやんわりと離し、棺桶から立ち上がって“転校生”の前に立つ

『…安心して。何があっても貴女たちは守るから』

一等星も
プロデューサーも
双子も
かつての友人たちも

今度こそ全て守るから

“だから……”

そう言葉を続けて彼女の手を取って純粋で無垢な瞳と目を合わせる

『絶対に夢を諦めないで』

＿＿＿＿決して私のように堕落してはいけない。

そんな事を告げた時、目の前の彼女から返された言葉は酷く予想外のものだった。

｢……綺麗な目｣

『っ、』

鈍器で頭を殴られたかのような衝撃に動揺が身体中を駆け巡る

……綺麗？この目が？

｢初めて目を見た時から思っていました。星空みたいだなって。本当に綺麗なコバルトブルー、｣

まるで慈しむようなその眼差しは既に堕ちきった私には眩しすぎて、到底釣り合わなくて

慌てて視線を下げてしまった

『……貴女はこの目を綺麗と言うのね、』

｢？はい｣

『……そう。』

どうして、貴女たちに限ってそんな事を言うのかしら

こんな生涯愛されることも無い忌みものを。
私が嫌いなものを。

綺麗だと、好きだと言うの？

『……過去にこの目を褒めてくれたのは3人』

「さ、え？？」

……あぁ、困ったな

愛らしく、そして純粋な彼女の姿を見ていると私はいたたまれなくなってしまうらしい

私と正反対なぐらいに綺麗で、誰からも愛される素質を持っていて、明るくて朗らかで

『……ごめんなさい。今日はここまでにさせて。』

転校生の長所を妬みのように挙げる自分が嫌で気づいたらそんな事を言っていた。

「A」

『安心して。明日からはちゃんと特訓に付き合うわ』

今は少しだけ体調が優れない。

そんな半分嘘で半分本当の気持ちを伝えると後方の紅い瞳が心配そうに歪む

……あぁ。

また悲しませてしまった

本当はそんな顔して欲しい訳じゃないのに

「……送っていくぞい」

『平気よ。貴方は一等星達の相手をしてあげて』

寂しそうに歪む彫刻のように美しい顔を見ないように

振り返らず1歩、また1歩扉の方へ歩む。

当然視線は私に集まったまま。

双子に
渉の後輩に
泉さんの宝物

今回は一言も交わさなかったけれど、いつかはちゃんとお話しよう

＿＿＿＿またね