女王の朔望月 (ページ38)

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“全部諦める”

そう言った彼女に俺は何が出来るだろう

Trickstarに革命の手伝いを頼まれた時
革命が上手くいった暁にはもう一度Aを輝かしい舞台まで上がらせようと画策していたのに

そんな希望さえとうの昔に手折られてしまっていた。

ｷﾞｭ、と衝動的に抱きしめても俺の背に腕が回ることは無く、ただ静寂に包まれるだけ。

顔を紅潮させ小言を言っていたかつての姿はどこにもない

「……悪い。本当に悪い、」

『……零が気に病むことじゃないの。それに電話で言ってたじゃない。希望の光を見つけたって』

この学院を変える大きな一等星達

『ならその光を導いて。私なんかに目をくれている暇はないでしょう？』

……あぁ残酷だ。

俺が1番守りたかった最愛の人を深部まで破壊した挙句、未来まで奪って。

自由を
愛を
傲慢さを

Aに与えたかった。幸せになって欲しかった

『……零？……泣いてる、？』

溢れた涙は視界を滲ませ心に影を落とす。

そんな俺を見かねてようやく回された腕が酷く心地いい

『……ねぇ零』

「嫌だ。離さねぇ。……帰んなよ、」

わがままだって分かってる。
本当なら彼女の決断を否定したくない。

けど、どうしたってAが笑顔でいれない未来を歩かせたくは無い

「……A。お前を探してる奴らがいる」

『…なぜ』

「お前に希望を見出してるんだ。お前に助けを求めて手を伸ばしている」

だから
俺のわがままでいい。エゴでいい。

「……俺様ちゃんからの命令だ。革命を導いてやれ」

『何を言って、』

「お前がまだ俺達を大事に想ってくれてんなら俺の命令に応えろ。それとも俺達はお前が世界で唯一嫌悪を抱く家の人間より不要な存在か？」

『っ、』

脅しにも似た発言に息を詰まらせ、ゆるゆると回していた腕を下げる彼女

離れていかないように抱きしめる力を強くした時、スっと息を吸う音が鼓膜を揺らした

『……凛月に無理させた分は働きます、』

「！それは、」

『でも用を成したら引き止めないで』

「っ、……分かった」

本当は拒絶のような返答に心が痛む。
けれどそんな甘ったれた事はAの前で言ってはいけない

時間を貰えただけ良かった。そう自分に言い聞かせる

「……けど忘れんな

俺がお前を愛している事実を、な」

だから今度こそお前を守る。

契や縋りに似た想いを吐露し、俺と同じ色の艶やかな髪に口付けた