女王の朔望月 (ページ33)

今日:106 hit、昨日:95 hit、合計:108,895 hit

31 ページ33

・

『…うん。上出来』

｢ほんと！？やったぁ！｣

ありがとう
そう伝えると目の前の双子達は飛んで跳ねて喜ぶ

それにしても随分器用なのね。
かなり細かい指示があったのに10分ちょっとで終わらせてしまうなんて

『…ねぇ零。貴方の後輩さんとっても素敵な子ね』

｢それって俺たちの事？嬉しい〜！｣

ニッコリと満面の笑顔を見せてくれる2人をもう一度手招きし、棺桶の頭の方に赤い子、足の方に緑の子を座らせる

相変わらず下方からドカン！と振動が来るせいか2人は“うへぇ……”と項垂れる

『……優秀な2人に最後のお願いがあるの』

｢なになに！？手伝うよ〜♪｣

『私がこの部屋を出てから5分間2人はこの棺桶に座っていて欲しいの』

｢それだけでいいんですか？｣

あんな緻密作業の後で座ってるだけなんて相当意外だったんだろう。2人が目を丸くする

……けどね。

本当に過酷なのはこれからなの。

今は私がここに座っているから零は力を抑えてくれてる。けど、私が退いたら＿＿＿＿

｢｢…………え｣｣

『…よろくしね』

そう言って静かに棺桶から立つと双子は顔を青くし、下をじっと見つめる

そんな2人の頭を撫でて別れの言葉を述べていく

『……本当に偶然だったけど貴方たちに会えて良かった。2人とも絶対輝かしいアイドルになれる。私が保証する。だから絶対に諦めないで』

私が愛したあの場所に立って沢山のサイリウムに囲まれる夢を2人は絶対に諦めちゃいけない。

＿＿＿＿＿特に、

『……貴方』

青を纏い、羨望と挫折、憂い、諦めを帯びている貴方

『……貴方は世界に1人しかいない個性。そこを間違えちゃダメ。貴方は決して“出来損ない”なんかじゃない。』

｢っ！…どうしてそれを、｣

『目を見れば分かるの。……それじゃあ私はここで。

＿＿＿＿＿零。ばいばい』

最後の挨拶を残し、1歩足を踏み出した瞬間にドン！！と先程とは比べ物にならない音が響き渡る

｢ひぃぃぃっ！？ちょ、朔間先輩俺たちが乗ってｯ…？！｣

｢待って今バキｯって音した！？棺桶壊れるんじゃ、｣

｢アニキあと何分！？｣

｢まだ20秒も経ってないｯ、てっ！！｣

徐々に部屋から遠ざかっているはずなのに悲鳴だけはどんどん大きくなっていく。

怖い思いをさせてごめんなさい
届かない謝罪を心の中で繰り返す私は気づかない

｢(……俺もあの人とちゃんと話したい)｣

苦しみから私へ必死に手を伸ばしている彼の事に